ノーベル平和賞:被団協への授賞は「核のタブー」維持への現実的な選択

日本原水爆被害者団体協議会(被団協)へのノーベル平和賞授賞は、世界に大きな反響を呼びました。jp24h.comでは、ノルウェー・ノーベル賞委員会のヨルゲン・ワトネ・フリドネス委員長に単独インタビューを行い、授賞の真意に迫りました。フリドネス委員長は、被団協への授賞は「核のタブー」の重要性を再認識させ、核兵器使用を防ぐための「現実的」な選択であったと強調しました。

ノルウェー・ノーベル賞委員会のフリドネス委員長(読売新聞撮影)ノルウェー・ノーベル賞委員会のフリドネス委員長(読売新聞撮影)

ウクライナ情勢と「核のタブー」の危機

フリドネス委員長は、ロシアによるウクライナ侵攻と度重なる「核の威嚇」を背景に、核兵器廃絶への道のりは長く険しいことを認めざるを得ないと語りました。「核兵器のある世界で生きなくてはならないという現実を受け入れる必要がある」と述べ、核兵器が存在する限り、その使用を防ぐ「核のタブー」の維持が極めて重要であることを強調しました。

被団協の活動:核のタブーを支える礎

1945年の広島・長崎への原爆投下以来、核兵器は使用されていません。フリドネス委員長は、この「核のタブー」の形成と維持に、被団協と被爆者の証言が大きく貢献してきたと高く評価しました。「被爆者の声に耳を傾けることは、核のタブーが揺らぎやすい現代において、極めて重要だ」と訴えました。

ノーベル研究所に展示されているメダルのレプリカと折り鶴ノーベル研究所に展示されているメダルのレプリカと折り鶴

核なき世界への希望:被団協の70年の歩み

過去に核軍縮や核廃絶に貢献した個人・団体にもノーベル平和賞が授与されてきましたが、フリドネス委員長は、それらの受賞者と被団協に共通する理念は「核なき世界」の実現への強い意志であると指摘しました。被団協が70年以上にわたって活動を続けてきたことに敬意を表し、「被団協の活動は『核なき世界』への希望を象徴するものだ」と称賛しました。

被爆者の高齢化と次世代への継承

被爆者の高齢化が進む中、フリドネス委員長は、被爆体験の風化を防ぎ、次世代に継承していくことの重要性を訴えました。「原爆の悲惨さを伝える証言を被爆者だけに頼るべきではない」と述べ、日本だけでなく世界中の若い世代がその責任を担う必要性を強調しました。 若い世代が核兵器の恐ろしさを学び、平和への意識を高めていくことに期待を寄せました。

インタビュー詳細:フリドネス委員長の言葉

読売新聞のインタビューに対し、フリドネス委員長は、被団協への授賞理由を以下のように説明しました。

「1945年以降、核兵器が使用されていないことは注目にすべき事実です。被団協と被爆者の証言は、『核のタブー』を作り、維持する上でかけがえのない役割を果たしてきました。核戦力の近代化やロシアの『核の威嚇』、核軍縮条約の失効など、核のタブーが脅かされている現状において、被団協の功績を称え、被爆者の声に耳を傾けることが重要だと考えます。」

この授賞は、核兵器のない平和な世界の実現に向けて、私たち一人一人に何ができるのかを改めて問いかけるものです。