シリアのアサド政権崩壊後、イスラエルによるシリア国内の軍事拠点への攻撃が激化しています。ゴラン高原の緩衝地帯への侵攻など、イスラエルの強硬姿勢の背景には、アサド政権崩壊後の混乱と、それに伴う安全保障上のリスクへの懸念があると見られています。この記事では、イスラエルの軍事介入の真意と、今後のシリア情勢について詳しく解説します。
イスラエルの「最悪のシナリオ」想定
イギリスのシンクタンク、チャタムハウスの中東専門家、ヨッシ・メケルバーグ氏は、「イスラエル政府は紛れもなく、最悪のシナリオを想定して行動している」と指摘しています。 イスラエルは、アサド政権の崩壊が、イランやヒズボラといった敵対勢力の台頭を招き、自国の安全保障を脅かす事態につながると危惧しているのです。
イスラエルの夜間攻撃を受けたシリア国防省傘下のバルゼ科学研究センター
複数の専門家は、ネタニヤフ首相はアサド政権の継続こそが、シリアにとっての安定を維持する最善策だと考えていたと分析しています。アサド政権崩壊後の混乱を懸念していたためです。しかし、現実はその懸念が現実のものとなりつつあります。
ゴラン高原への侵攻と国際社会の反応
ネタニヤフ首相は、1974年のイスラエル・シリア間の兵力引き離し協定を無効と宣言し、ゴラン高原の緩衝地帯への軍派遣を強行しました。国連は、この行動を兵力引き離し協定違反として非難し、アメリカのバイデン政権も「一時的な措置」にとどめるよう求めています。
イスラエルは、シリア国内の化学兵器貯蔵施設や防空システムなどへの空爆も繰り返し行っています。これらの軍事施設が反体制派や過激派組織の手に渡ることを防ぐためだと主張しています。しかし、国連シリア担当特使は即時の爆撃停止を要求しています。
イスラエルの軍事介入、その目的とは?
イスラエルの国家安全保障研究所(INSS)のダニー・シトリノウィッツ氏は、「ミサイルから航空機、軍事研究センターまで、シリアにおいて戦略的な価値を持つものはすべて攻撃対象となるだろう」と述べています。イスラエルは、アルカイダやイスラム国といった過激派組織の台頭を警戒し、自国への脅威を未然に防ぐため、先制攻撃を続けているのです。
混迷深まるシリア情勢、今後の行方は?
イスラエルの軍事介入は、シリア情勢をさらに不安定化させる可能性があります。国際社会は、イスラエルの行動を非難する一方で、具体的な解決策を見出せていません。シリア国内では、アサド政権崩壊後の権力闘争が激化し、内戦の再燃も懸念されています。
シリア ダマスカス
今後のシリア情勢は予断を許しません。国際社会の協調と、シリア国内の和平プロセス推進が、混迷を極めるシリアの未来を切り開く鍵となるでしょう。