北海道では、ヒグマによる人身被害が後を絶たない深刻な状況が続いています。住民の安全を守るため、日々ヒグマ駆除の最前線で活動するハンターたち。しかし、彼らを取り巻く環境は厳しく、様々な苦悩や葛藤を抱えています。今回は、ハンターたちの現状、そしてヒグマ問題の未来について考えてみましょう。
ヒグマ駆除の現実:ハンターたちの声
ヒグマ駆除の要請は、常に突然やってきます。札幌市で老舗の日本茶専門店を営む玉木康雄さんは、北海道猟友会・札幌支部のヒグマ防除隊隊長も務めています。多忙な業務の合間を縫って、ヒグマ駆除の出動要請に対応する日々。時には、出張先から呼び戻されることも少なくありません。
2022年3月、東京出張中に三角山でのヒグマ襲撃事件の知らせを受け、緊急帰郷した玉木さん。市民の憩いの場で起きた悲劇に、胸を痛めたといいます。当時、札幌市でのヒグマの出没件数は過去最多を記録。ハンターたちの負担は増す一方です。
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揺らぐ猟友会:出動拒否の方針
ヒグマ駆除にハンターの協力は不可欠です。しかし、2024年11月、北海道猟友会は、自治体との連携が不十分な場合、出動を拒否する方針を打ち出しました。この背景には、砂川市のハンター男性が住宅方向への発砲で猟銃所持許可を取り消されたという判決があります。
この判決は、ハンターたちの間に大きな波紋を広げました。玉木さんは、関係者間の連携不足が問題の根底にあると指摘します。安全な駆除活動を行うためには、自治体、警察、そしてハンター間での綿密な連携が不可欠です。
ヒグマ問題の未来:共存への道を探る
ヒグマと人間が共存できる社会を実現するためには、どのような対策が必要なのでしょうか。専門家の中には、ヒグマの生息域を保全すること、そして人間の生活圏への侵入を防ぐ対策を強化することが重要だと指摘する声もあります。例えば、ヒグマの餌となる資源を適切に管理したり、人里周辺に電気柵を設置するなどの対策が考えられます。
北海道大学獣医学部の熊谷教授(仮名)は、「ヒグマとの共存は容易ではありませんが、諦めてはいけない課題です。地域住民、行政、専門家、そしてハンターが一体となって、知恵を出し合い、解決策を探っていく必要があります」と語っています。
ヒグマ問題への理解を深める
ヒグマは北海道の貴重な自然資源であり、生態系の頂点に立つ重要な存在です。しかし、人間との軋轢は避けられない現実でもあります。ヒグマ問題の解決には、多角的な視点と長期的な取り組みが必要です。私たち一人ひとりがヒグマへの理解を深め、共存への道を探っていくことが重要です。