今年の5月、東京・立川市の小学校で発生し、社会を騒然とさせた襲撃事件の公判が進行中である。子ども同士の些細なトラブルが発端となり、母親からの相談を受けた知人男性2名が学校に乗り込み、教師に重傷を負わせたこの傷害事件は、「モンスターペアレント」問題の究極的な事例として注目を集めた。逮捕・起訴された2人の男性被告の裁判では、これまで報じられていなかった事件の詳細と、その背景にある「モンスターペアレント」の思想が次々と明らかにされている。
酒瓶が凶器に、小学校襲撃事件の経緯
事件は5月8日午前11時前、立川市立第三小学校で発生した。報道によると、被告ら2名は学校2階の2年生教室に侵入し、特定の児童の名前を叫びながら暴行に及んだ。その際、手に持っていた酒瓶を床に叩きつけて割り、止めに入った担任教師や校長に対し次々と暴行を加えた。逮捕されたのは、市内で飲食店を経営する後藤竜児被告(47)と、従業員の高松龍生被告(27)である。
この事件の直前、被告らの知人である2年生の女子児童の母親が、学校で発生した自身の子どもとクラスメートの女児との間のトラブルについて、担任教師と面談を行っていた。これは2度目の面談だったという。母親は一度学校を離れたものの、面談内容に納得せず、以前から面識のあった後藤被告に連絡。その後藤被告が、高松被告と共に学校へ向かい、今回の事件へと発展したのである。
立川小学校襲撃事件の公判が始まった東京地裁立川支部の外観
公判で明かされた「社会制裁」の言葉
両被告は傷害と公務執行妨害の容疑で起訴され、7月17日、東京地裁立川支部で初公判が開かれた。ある全国紙の社会部デスクによると、この冒頭陳述で、事件の新たな詳細が明らかになったという。事件の発端は4月28日、後藤被告が母親から「娘がいじめられている」との相談を受けたことに遡る。
後藤被告は当時、母親に担任教師と話すべきだと助言したものの、その一方で「そういう陰湿なやつには、社会制裁も必要だ」「子どもが男の子だったら、そのガキびびらせに行くんだけどな」といった不穏なメッセージを送っていたことが判明した。これを受け、母親は4月30日に担任教師と面談し、その後、相手の女児の母親から謝罪を受けた。これにより一件落着となるはずだったが、母親はその後も相手女児やその保護者の言動に不満を募らせていったという。今回の公判では、このような母親の感情の推移と、それに対する被告らの過激な介入が浮き彫りにされている。
まとめ
立川小学校襲撃事件の公判は、子どもを巡るトラブルがエスカレートし、学校という公共の場での暴力へと発展した背景に、「モンスターペアレント」と呼ばれる保護者とその周囲の誤った認識が深く関わっていることを示している。後藤被告の「社会制裁」を求めるようなメッセージは、私的な感情が法を超えた行動へと繋がる危険性を強く示唆している。この事件は、学校と保護者の関係性、そして社会における紛争解決のあり方について、改めて深く問い直すきっかけとなるだろう。今後の公判の行方と判決が注目される。