衆院憲法審査会の与野党議員は、欧州4カ国の視察を20日から開始した。各国の憲法改正の状況や国民投票制度などを調査する。憲法論議が行われない中での視察に冷ややかな見方も広がるが、自民党は視察で培う野党とのパイプを、10月4日に召集される臨時国会での改憲議論につなげたい考えだ。
海外視察は2年ぶり。29日までの日程で、ドイツ、ウクライナ、リトアニア、エストニアを歴訪する。視察団は衆院憲法審の森英介会長(自民党)、新藤義孝与党筆頭幹事(同)、山花郁夫野党筆頭幹事(立憲民主党)、北側一雄幹事(公明党)らで構成する。20日にはドイツの首都ベルリンで、改憲手続きに関し有識者と意見交換した。
衆院憲法審ではこの2年間、実質的議論となる「自由討議」は行われてこなかった。議論を呼びかける自民党に対し、立憲民主などの野党が徹底して拒み続けているためだ。
今回の視察には総額1千万円超の衆院予算が投じられる見通しで、自民党内には「議論しない憲法審が視察をする意味があるのか」(中堅)との批判もあがる。
一方、視察が議論進展の呼び水になる可能性もある。憲法議論を進めるには与野党の調整が欠かせない。とりわけ、国会議論の場となる憲法審のメンバー同士の関係は重要だ。長期視察をきっかけに与野党議員が気脈を通じれば、議論の環境は整いやすくなる。今回の視察が議論前進への布石となるか否かは、秋の臨時国会の推移を見れば明らかになる。(石鍋圭)