シリアでアサド政権崩壊後、新たに発足した暫定政権の情報相、ムハンマド・オマル氏が毎日新聞の単独インタビューに応じ、新政権の姿勢を明らかにしました。国民の自由を尊重し、国際社会との協調を目指す姿勢を示す一方で、イスラム主義への懸念払拭に腐心する様子が伺えます。
暫定政権、表現の自由を強調
オマル情報相は、前政権下では国民の表現の自由が著しく制限されていたと指摘。新政権下では、「シリアの融和に反しない限り、表現の自由に制限はない」と明言しました。メディアによる政権批判も容認する姿勢を示し、前政権との明確な違いを強調しています。
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アサド政権崩壊後、シリアには多くの海外メディアが殺到しており、オマル氏は報道内容への不介入を強調。情報統制を行わない姿勢を明確に打ち出しました。
イスラム主義への懸念払拭へ
暫定政権を主導する「ハヤト・タハリール・シャム」(HTS)は、アルカイダ系の組織を前身としていることから、国際社会からはイスラム主義に基づく統治への懸念の声が上がっています。しかし、HTS指導者のジャウラニ氏は女性の服装の自由や少数派の権利の保障を表明するなど、穏健なイメージをアピールしています。
オマル氏も「今は政府機構の立て直しを優先している。その後のことは全国民の合意で決まる」と述べ、憲法改正についても国民の合意を重視する姿勢を強調。イスラム主義に基づく政策を一方的に推し進める考えはないことを示唆しました。
暫定政権の情報相、元ジャーナリスト
オマル氏はシリア北西部イドリブ県出身。2011年に始まった内戦では反体制運動に参加し、ジャーナリストとして政府軍との戦闘を報道していました。HTSがイドリブ県に設置した行政機構「救国政府」でメディア部門の創設に携わり、2023年から情報相を務めています。ジャーナリストとしての経験を持つオマル氏が、新政権の情報政策を担うことは象徴的と言えるでしょう。
国際社会への支援要請
オマル氏は前政権の崩壊について「これほど早く勝利するとは思わなかった」と振り返りつつ、国際社会に対しては「日本を含むあらゆる国と良好な関係を築きたい」と述べ、支援を求めました。今後のシリア情勢の安定化には、国際社会の協力が不可欠となるでしょう。
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崩壊したアサド氏の邸宅。今後のシリアの復興には多くの課題が残されています。新政権は、国民の融和と国の再建という大きな課題にどのように取り組んでいくのでしょうか。