日本の医療現場は危機に瀕しています。物価高、人件費上昇、そして診療報酬改定の影響で、医療機関の経営は悪化の一途を辿っています。特に東京では、その影響が顕著に表れています。
都内における入院病床の不足
東京には多くの医師や病院があるというイメージがありますが、実際には、肺炎や胃腸炎などで簡単に入院できる中小規模病院は不足しています。大学病院や大病院は充実しているものの、200床未満の中規模病院の病床数は、他都市と比べて少ないのが現状です。例えば、文京区には大学病院が4つもある一方、200床未満の病院はわずか2つしかありません。
東京都内の病院の現状
国公立や特殊法人・社会福祉法人が経営する大病院は、診療報酬が下がっても経営を維持できます。また、19床以下のクリニックは、日本医師会の影響力により診療報酬が優遇されています。しかし、民間経営の中小病院は、厳しい経営環境から撤退を余儀なくされているのです。これが、コロナ禍で都内における入院難が深刻化した原因の一つと言えるでしょう。
医療機関の経営状況
財務省の「医師過剰論」の矛盾点
医療費抑制を推進する財務省は、「医師過剰論」を主張しています。彼らは、ドイツやフランスのように医師の需給を調整することで医療費を抑制できると考えているようです。しかし、この主張には大きな矛盾があります。
財務省の主張
ドイツは医師の需給調整を行っているにも関わらず、人口1000人あたりの医師数は日本の約1.7倍です。もし医師の増加が医療費増加の直接的な原因だとするならば、ドイツの医療費は日本よりもはるかに高額になっているはずです。しかし、実際にはそうではありません。
ドイツの医学部人気と日本の現状
ドイツでは医師の地位は高く、医学部は依然として人気学部です。43の医学部には、約9500人の定員に対して約4万5000人が応募しています。一方、日本の人口あたりの医学部定員はOECD加盟国の中でも非常に少なく、韓国に次いで下から2番目です。近年、韓国は医学部定員の大幅な増員を決定しました。医師過剰を主張する日本とは対照的な政策です。
2006年の厚生労働省の報告書では、2022年には臨床医師数は必要数と均衡すると予測されていましたが、現状は大きく異なっています。医師不足は深刻化しており、医療現場の負担は増大しています。
財務省は、医師の開業規制ではなく、医師の総数コントロールに焦点を当てるべきです。そして、政府は医学部定員の増員など、抜本的な対策を講じる必要があると言えるでしょう。