韓国社会は、2度の戒厳令を経験し、民主主義の危機に直面しています。本稿では、第1回ソーシャルコリアフォーラムでの専門家の意見を元に、韓国民主主義の現状と課題、そして未来への展望を探ります。
戒厳令と民主主義の退行
2024年12月、韓国は戒厳令という衝撃的な事態を経験しました。1987年の民主化以降、過去の遺物と思われていた独裁の影が再び社会を覆い、民主主義の退行が現実のものとなりました。中央大学のシン・ジヌク教授は、この事態を「総体的危機」と表現し、大統領個人だけの問題ではなく、社会システム全体の脆弱性を指摘しています。
中央大学のシン・ジヌク教授が講演している様子
シン教授は、国際的な評価機関による韓国の民主主義後退の警告を無視してきたことが、今回の事態を招いた一因だと分析しています。V-Dem研究所の自由民主主義指数や国境なき記者団の報道の自由度ランキングの低下は、韓国社会の深刻な状況を物語っています。
民主主義退行の要因:複合的な危機
シン教授は、民主主義の退行の背景には、過度な権力集中、政治の両極化と急進主義、陰の権力の肥大化、そして不平等の拡大という複合的な要因があると指摘します。特に、大統領に過大な権力が集中している現状は、指導者によっては民主主義を脅かす危険な「諸刃の剣」となり得ると警鐘を鳴らしています。
第1回ソーシャルコリアフォーラムの様子
国会立法調査処のイ・グァンフ処長も、韓国の民主主義の脆さを指摘しています。戒厳令発令のプロセスで露呈した前近代的な要素は、民主主義の根幹を揺るがす深刻な問題です。イ処長は、現在の韓国を「民主主義の強固化への長い道のりで、霧が立ち込める『灰色の地帯』をさまよっている」と表現しています。
政治の復元と民主主義の未来
イ処長は、尹錫悦大統領のようなポピュリズム的独裁は、政治不信が高まれば再び出現する可能性があると警告します。2度の戒厳令を経験した国民の政治的効能感が低下すれば、民主主義そのものへの信頼が失われかねません。
イ処長は、政治の復元こそが民主主義の危機を回避する鍵だと提言します。そのためには、国民の生活の質を向上させ、政治への信頼を取り戻す必要があります。「3度目の戒厳令はポピュリズムからファシズムへとつながる」というイ処長の言葉は、韓国社会の未来への警鐘と言えるでしょう。
韓国は、民主主義の岐路に立っています。「灰色の地帯」から脱却し、真の民主主義を実現するためには、国民一人ひとりが政治に関心を持ち、より良い社会を築くための努力を続けることが不可欠です。