ウクライナ情勢:欧州、トランプ次期大統領就任を前に対応策模索、ゼレンスキー大統領は団結訴える

次期アメリカ大統領ドナルド・トランプ氏の就任が迫る中、ウクライナ紛争への対応策を具体化しようと、欧州が動き出しています。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシアに奪われた領土を取り戻す力は自国にはないとしながらも、欧州の結束を強く訴えています。

ゼレンスキー大統領、欧州首脳と会談、国際社会の支援に期待

2月18日、ゼレンスキー大統領はベルギーのブリュッセルにあるNATO本部で、欧州連合(EU)首脳らと会談を行いました。会談に先立ち、ゼレンスキー大統領は「欧州は強く団結した立場を示す必要がある」と強調しました。

ゼレンスキー大統領ゼレンスキー大統領

前日のインタビューでは、「我々には(ドンバス、クリミア半島といった)この地域を取り戻す力がない。国際社会の外交的圧力に頼るしかない」と述べ、さらに「どの指導者もウクライナを排除してロシアと交渉する権利はない」と訴えました。

トランプ氏の動向に懸念、欧州は独自の対応策を模索

これらの発言は、トランプ氏を意識したものと解釈されています。アメリカのメディアは、トランプ氏がウクライナがドンバスなどを放棄する形での終戦を進める可能性があると報じています。

ブリュッセルでの会談は、トランプ氏が16日に「ウクライナ戦争を終わらせる」と公言し、トランプ氏に任命されたキース・ケロッグ特使が来月初めにウクライナと欧州を訪問する予定であると報じられた後に開催されました。トランプ氏は、ロシアとウクライナの停戦が実現した場合、アメリカではなく欧州が平和維持軍を派遣すべきだという立場をとっています。

NATO本部NATO本部

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、会談に先立ち、「最優先事項はウクライナの対空防衛を改善し、より多くの武器を供与することだ」と述べ、「欧州平和維持軍の議論は時期尚早だ」と釘を刺しました。

しかし、ニューヨークタイムズ紙は、「トランプ氏が率いるアメリカの政策の不確実性を考慮すると、ストルテンベルグ事務総長は今回の会議でNATOの対応を調整するはずだ」と報じています。さらに、「欧州は、『ウクライナにとって不利な条件で交渉すれば、アメリカの大統領が中国に対して弱腰に見えるだろう』とトランプ氏を説得することを望んでいる」とも伝えています。

欧州、中国への対応に苦慮

トランプ氏は7日、ゼレンスキー大統領とフランスのエマニュエル・マクロン大統領との会談で、「ロシアに終戦を決断させるには中国の圧力が必要だが、欧州が中国を動かすために動く必要がある」と述べたと報じられています。

欧州が中国への対応に苦慮している点は、19日に開催されるEU首脳会議で発表される共同声明の草案にも表れています。ブルームバーグ通信が入手した草案では、ロシアに武器を供与し、兵士を派遣したイランと北朝鮮は非難されていますが、ロシアの攻撃用ドローン開発を支援した中国は批判されていません。

ブルームバーグ通信は情報筋の話として、「ウクライナがEUに対し、中国をイランや北朝鮮と同じレベルで扱うことを求めないよう要請した」と報じています。しかし、ウクライナ側はこれを否定しています。ブルームバーグ通信は、「声明はその後変更される可能性があるが、草案はロシアを支援した中国企業に制裁を科したEUの最近の措置とは対照的だ」と指摘しています。

EU、西バルカン諸国との関係強化へ

これに先立ち、EU加盟国はこの日、EU加盟を希望しているアルバニアやセルビアなど西バルカン6カ国との首脳会議を開催し、関係強化の意思を表明しました。これは、ロシアと中国の影響力拡大を阻止するための動きと解釈されています。

ロシア、警告と融和のメッセージを同時に発信

ロシアは同日、警告と融和のメッセージを同時に発信しました。ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官は、「核兵器保有国であるロシア、中国、北朝鮮に圧力をかけるアメリカのゲームは、壊滅的な結果につながりかねない」と警告しつつも、「ロシアはアメリカとの関係正常化のための提案を検討する用意がある」と述べました。

しかし、ロシア軍のワレリー・ゲラシモフ参謀総長は同日、「アメリカがより破壊的な兵器を開発するために、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約と中距離核戦力(INF)条約から脱退した」と主張しました。さらに、「アメリカ、日本、韓国が主要な役割を担うアジア版NATOが形成されている」とし、「ロシア、中国、北朝鮮が同盟の主要な敵と宣言された」と指摘しました。