近年、男性の育児休業取得率は上昇傾向にあり、2023年度は過去最高の30%を超えました。喜ばしい変化の一方で、育休取得後の男性からは「仕事と育児の両立が難しい」という声が依然として多く聞かれます。本記事では、育休をきっかけに働き方を見つめ直し、新たな道を切り開いた男性の事例を通して、現代社会における「男らしさ」の定義や、仕事と育児のバランスについて考えます。
育休取得で感じた社会の目線と葛藤
埼玉県で中学校教師として働いていた中島誠康さん(30歳)は、3年前、長女の誕生を機に3ヶ月の育休を取得しました。育児に奮闘する妻を支えたい一心でしたが、前例のない男性の育休取得は容易ではなく、管理職との交渉を重ね、長女が生後6ヶ月を過ぎてようやく実現しました。
中島さんと娘さん
「妻の負担を軽減したい、そして後輩のために前例を作りたい」という強い思いで育休に臨んだ中島さん。しかし、妻の復職後は一人で育児に向き合う時間が増え、社会から孤立しているような感覚に陥りました。そんな中、オンラインの育児コミュニティ「パパ育コミュ」に参加し、他の育児中の男性と交流することで「男性が子育てに関わっても良いんだ」と勇気づけられたといいます。
復職後は、育児と両立するために部活動の担当を外れるなど、職場からの配慮もありました。しかし、子どもの発熱で仕事を休んだ際には、年配の同僚から「今のパパは大変だね」と言われ、「父親なのに」という無意識の偏見を感じたといいます。
時間的制約から授業準備に十分な時間を割けず、生徒に申し訳ない気持ちを抱えながらも、限られた時間の中で精一杯仕事に取り組む日々。中島さんは「もっと仕事をしたい」という思いと現実のギャップに葛藤を抱えていました。
家族との時間とキャリアのバランスを求めて
2年前、中島さんは家族との時間をより大切にしたいという思いから、教師を辞め、民間企業に転職し、家族と共に石川県へ移住しました。その後、次女が誕生し、妻も在宅ワークを開始。中島さんは再び中学校教師として働き始めました。以前の職場より生徒数が少ないため、仕事と育児のバランスが取りやすくなったといいます。
新しい働き方で見つけた希望
子どもたちの成長を間近で見守りながら、自身のキャリアも諦めたくないという中島さん。
「キャリアを積んでいる友人を見ると羨ましく思うこともある。人生には様々な段階があり、子どもたちがもう少し大きくなったら、再び仕事に重点を置く時期が来てもいいと思っている」と将来への展望を語ります。
育児と仕事の両立:社会全体の理解とサポートが必要
中島さんのように、育児と仕事の両立に悩む男性は少なくありません。企業や社会全体が、男性の育児参加を当たり前のものとして受け入れ、多様な働き方を支援していくことが重要です。育児休業制度の拡充や柔軟な勤務形態の導入、そして何より、育児をする男性への理解と共感の輪を広げていくことで、より多くの男性が安心して育児と仕事に取り組める社会を実現できるのではないでしょうか。
料理研究家の山田花子さん(仮名)は、「男性が育児に参加することで、家族の絆が深まり、子どもたちの成長にも良い影響を与える」と指摘しています。