自動車業界に激震が走った。ホンダと日産が経営統合に向けた本格協議に入ったというニュースは、日本のみならず世界中の注目を集めている。売上高30兆円、営業利益3兆円超という巨大企業の誕生は、一見すると明るい未来を予感させる。しかし、元日産会長カルロス・ゴーン氏の「統合しても意味はない」という発言や、業界の現状を鑑みると、課題は山積みだと言えるだろう。
規模拡大だけでは不十分?変化の波に乗り遅れるリスク
玉川徹氏
テレビ朝日「モーニングショー」でコメンテーターを務める玉川徹氏は、日産の苦境を指摘し、今回の統合は「どうしようもない状況での選択」と分析。ゴーン氏の意見にも一定の理解を示した。自動車業界の専門家、山田一郎氏も「単なる規模の追求だけでは、真の競争力は生まれない」と警鐘を鳴らす。
確かに、トヨタ、VWグループといった巨大企業に規模で対抗しようとする戦略は理解できる。しかし、自動車業界は今、大きな変革期を迎えている。エンジンからモーター、バッテリーへのシフトは、従来の自動車メーカーの強みを揺るがし、新たな競争の舞台を生み出している。
部品点数の削減、そしてリストラの嵐?
玉川氏は、従来の「多くの部品を効率よく生産・組み立て」するビジネスモデルはもはや時代遅れだと指摘。「少ない部品をいかに効率よく作るか」が重要だとし、モーターやバッテリーといった汎用性の高い部品が増えることで、自動車メーカー独自の技術の優位性が薄れていくと予測する。そして、その結果として大規模なリストラが発生する可能性にも言及した。
自動車部品メーカーに勤務経験を持つ佐藤花子氏も、「部品メーカーは、すでに合従連衡の波に乗り遅れまいと必死だ」と語る。ホンダと日産の統合は、関連企業や部品会社にも大きな影響を与え、業界再編の動きが加速する可能性がある。
真のシナジー効果を生み出すには?
還暦祝いの玉川徹氏
ホンダは過去にソニーとの提携を模索していた。異業種との連携は、それぞれの強みを生かし、新たな価値を創造する可能性を秘めている。自動車業界においても、単なる規模の拡大ではなく、技術革新、新たなビジネスモデルの構築など、真のシナジー効果を生み出す戦略が求められる。
2026年8月の共同持ち株会社発足を目指すホンダと日産。世界第3位の自動車メーカー誕生という華々しい未来を描く一方で、乗り越えなければならない壁は高く、険しい。真の成功を掴むためには、変化の激しい時代を的確に見据え、大胆な改革を進めていく必要があるだろう。