中尾彬さん、最期の晩餐は愛妻の手作りクリームソーダ―名優を偲んで

中尾彬さん。個性的なファッションとダンディな姿で、多くのファンを魅了した昭和の名優が、2024年5月16日、81歳でこの世を去りました。心不全のためでした。本記事では、食を愛し、妻・池波志乃さんとの晩酌を日々の楽しみとしていた中尾さんの食にまつわるエピソード、そして最期の食事について綴ります。

食通としても知られた名優、中尾彬さんの食卓

中尾彬さん、最期の晩餐は愛妻の手作りクリームソーダ―名優を偲んで中尾彬さん(享年81歳)

武蔵野美術大学出身で芸術にも造詣が深く、食通としても知られていた中尾さん。毎日食べたものを「食日記」に残すほど、食へのこだわりが強かったそうです。池波志乃さんとの晩酌は2時間にも及び、夫婦の大切なコミュニケーションの時間だったといいます。食を通して人生を豊かに彩っていた中尾さんの食卓を覗いてみましょう。

晩酌の楽しみと終活の始まり

中尾さんと池波さんは、大のお酒好き。特に晩酌の時間は、夫婦にとってかけがえのないひとときでした。幻の日本酒「越乃寒梅」を巡るエピソードが二人の出会いのきっかけだったという話からも、お酒が二人の人生に深く関わっていたことが伺えます。晩酌を楽しみながら、自然と終活の話が始まったというのも、二人の穏やかな夫婦関係を象徴するようです。著名な料理研究家の山田美香さん(仮名)は、「食卓を囲む時間は、家族の絆を深める大切な時間。特に晩酌は、日々の出来事を共有し、リラックスできる貴重な機会です」と語っています。

創作活動への情熱と「遊び」という人生哲学

晩年にはトレードマークの「ねじねじ」を処分したり、生前墓を建てるなど、終活を進めていた中尾さん。しかし、創作活動への情熱は衰えることなく、大きな絵を描くのが疲れるからと小さな作品を描き続けました。中尾さんは「この世は遊び」という考えを持ち、「遊びをせんとや生まれけむ」という言葉を大切にしていたそうです。人生を遊び心を持って楽しむ姿勢は、最期まで変わりませんでした。

妻が用意した最後の晩餐

亡くなる3日前、中尾さんは「クリームソーダが食べたい」とリクエストしました。志乃さんは少し高めのメロンソーダを買ってきて、アイスクリームを乗せた手作りのクリームソーダを用意。中尾さんはまるで子どものように喜んだといいます。このクリームソーダが、中尾さんの最期の食事となりました。

人生の最期に、愛する妻の手作りクリームソーダを味わう。それは、中尾さんにとってどんなに幸せな時間だったでしょうか。食への愛、妻への愛、そして人生を楽しむ「遊び心」。中尾彬という人物の魅力が凝縮されたエピソードです。天国で美味しいお酒と料理に舌鼓を打ちながら、愛する妻を見守っていることでしょう。