社長が選ぶ住まい:港区赤坂がトップ、都心マンション志向の理由

東京のビジネス界を牽引する社長層は、一体どこに居を構えているのだろうか。かつては郊外の広大な邸宅が富の象徴とされたが、現代の社長たちの住まい選びには大きな変化が見られる。最新の調査によると、東京都心の港区、特に赤坂が社長の居住地として圧倒的な人気を集めている。これは、多忙なビジネスライフにおける利便性の追求と、ステータスを重視する現代のトレンドを明確に示している。

社長居住地の最新調査結果:港区が突出

信用調査会社である東京商工リサーチが今年5月に実施した調査結果は、この新たなトレンドを裏付けている。東京都心の港区では、住民6人のうち1人が社長という驚くべきデータが示されており、社長比率は16.5%に達する。港区は、赤坂御用地や都立青山霊園といった緑豊かなエリアを擁しながらも、都心としての高い利便性を兼ね備えている点が特徴だ。

この調査をさらに詳しく見ると、「社長が最も多く住む街」のトップは港区赤坂で4596人。これに新宿区西新宿(3888人)、港区六本木(3559人)、港区南青山(3382人)、渋谷区代々木(3364人)が続く。町村ベースでの上位55位までを東京都内の地名が占めており、都心部への集中が鮮明になっている。

利便性とステータスが決定打

不動産ジャーナリストの榊淳司氏は、中小企業の社長にとって「良いところに住むこと」の重要性を指摘する。これは、資金調達時の担保として住居が用いられるケースがあるほか、多忙な日常の中で24時間体制で仕事に取り組む社長にとって、職住近接が不可欠であるためだ。

東京商工リサーチ情報部の坂田芳博氏も、港区赤坂などが持つ「ネームバリュー」が、住むだけで社長の信頼性やステータスを高めると分析している。取引先や金融機関など、様々なビジネス関係者からの評価にも繋がり、また移動の利便性が高い場所を選ぶ傾向も顕著であるという。

「お屋敷」から「都心マンション」へ:ライフスタイルの変化

かつて富裕層の象徴とされた田園調布(東京都大田区)や成城(東京都世田谷区)の広大な邸宅は、現代においては「時代遅れ」と捉えられつつあると榊氏は語る。その代わりに選ばれるのが、都心に近いマンションだ。マンションはゴミ捨てなどの日常の利便性に優れており、「お屋敷に住む時代は終わった」という言葉が象徴するように、現代の社長たちは実用性を重視している。

都心の高層マンションに暮らすイメージ。伝統的な邸宅志向からの変化都心の高層マンションに暮らすイメージ。伝統的な邸宅志向からの変化

さらに、榊氏は赤坂などの都心部では古いマンションや小規模な戸建ても多く見られ、そこに会社の登記をしている社長が多いと推測する。また、通勤に鉄道を利用するサラリーマンとは異なり、南青山などに住む社長層は、駅から多少離れていてもタクシーなどの車の便が良い場所を好む傾向にあることも指摘されており、そのライフスタイルの違いが住まい選びにも表れている。

結論として、現代の社長たちの住まい選びは、かつての「広大な邸宅」というイメージから、ビジネスの効率性、社会的なステータス、そして多忙なライフスタイルに合わせた「都心部の利便性の高いマンション」へと大きくシフトしている。これは、変化するビジネス環境と、富裕層の価値観の多様化を反映した、現代的なトレンドと言えるだろう。

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