遺品整理とは、一般的に、亡くなった親の荷物を残された子どもが片付けるケースがほとんどだ。しかし当然ながら、その逆もある。親が「子どもの遺品整理」に向き合う現場を取材した。
本連載では、さまざまな事情を抱え「ゴミ屋敷」となってしまった家に暮らす人たちの“孤独”と、片付けの先に見いだした“希望”に焦点をあてる。
YouTube「イーブイ片付けチャンネル」で多くの事例を配信するゴミ屋敷清掃・不用品回収の専門業者「イーブイ」(大阪府)。代表の二見文直氏に、「気持ちの整理がつかず、片付けができない」現場のリアルを聞いた。
動画:親が行う娘の遺品整理「気持ちの整理がつかなくて片付けできない」
■娘の病室に残った遺品の片付け
イーブイに来た最初の依頼は、ある高齢の母親からのものだった。大腸がんと闘病していた娘が、入院先の緩和ケア病棟で亡くなったという。依頼内容は、パソコン1台と段ボール5〜6個を、病室から隣の市にある自宅へ運んでほしい、というものだった。
遺品整理業者が扱うには少量だが、病室の荷物としては多い。それは、入院生活が長期にわたっていたことを物語っていた。
作業自体は10分足らずで終了したが、高齢の母親にとって、たとえ数個の段ボールであっても、それを病室から運び出すことは難しかったのだ。
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それから約1カ月半後、同じ母親から2回目の依頼が入った。今度は、亡くなった娘が住んでいた賃貸マンションを空にすることが目的だった。
「基本的に残しておくモノはもうなく、ある程度お母様のほうで、いるモノ、いらないモノを確認いただいているので、空の状態にする作業になります」
現場のスタッフは状況をそう説明する。いわゆる「ゴミ屋敷」という状態ではない。しかし、一般的な1人暮らしの家と比較すると、モノは多めだった。
リビングにある食器棚の引き出しを開けると、スーパーマーケットやコンビニエンスストアでもらってきたと思われるプラスチックのスプーンや割り箸が、詰め込まれていた。「いつか使うだろう」と保管しておいたモノだろうが、そのほとんどは使われることがないまま残されている。






