生まれた月が、子どもの学力、非認知能力、そして将来の収入にまで影響を与えるという驚きの事実をご存知でしょうか?一見信じがたいかもしれませんが、実は多くの研究によって裏付けられた「相対年齢効果」と呼ばれる現象です。この記事では、その科学的根拠と、私たちにできる対策について詳しく解説します。
相対年齢効果とは? スポーツ選手や企業CEOにも影響?
同じ学年でも、4月生まれと3月生まれでは約1歳もの年齢差があります。この年齢差は、特に幼少期において発達に大きな影響を及ぼします。この学年間の年齢差が「相対年齢」と呼ばれ、その高低が様々な能力に影響を与えることが明らかになっています。
例えば、イギリスやオランダのプロサッカー選手には、相対年齢の高い(早生まれの)選手が多いという研究結果があります。また、アメリカの大企業のCEOや連邦議会議員にも同様の傾向が見られるそうです。
サッカー少年の練習風景
学力への影響:早生まれは不利?
相対年齢は学力にも影響を及ぼします。国際的な学力調査によると、早生まれの子どもと遅生まれの子ども arasında、小学4年生時点の理系科目の学力テストで、最大で3.6ポイントもの偏差値の差があることが報告されています。
埼玉県で行われた研究でも、4月生まれの子どもは3月生まれの子どもに比べて、小学4年生時点の算数と国語の偏差値がそれぞれ3.5、3.6高いという結果が出ています。この差は学年が上がるにつれて縮小するものの、中学3年生時点でも完全にゼロにはなりません。
高校入試への影響
さらに、高校入試においても、早生まれの生徒は遅生まれの生徒に比べて、合格した高校の偏差値が4.7も高いという結果も出ています。学力を考慮してもなお1.4程度の差があることから、相対年齢効果の影響力の大きさが分かります。
非認知能力や将来の収入への影響
学力だけでなく、勤勉性、自制心、自己効力感といった非認知能力にも、生まれ月の影響は大きく、学年が上がっても差は縮まりにくいという研究結果があります。
さらに、早生まれの人は遅生まれの人に比べて、4年制大学を卒業する確率が高い、30~34歳時点の収入が高いといった研究結果も報告されています。まさに、生まれ月がその後の人生にまで影響を及ぼす可能性があるのです。
早生まれの子どもへの対策とは?
多くの先進国では、早生まれの子どもが保育所、幼稚園、小学校への入学時期を1年遅らせる制度が導入されています。しかし、経済的に恵まれた家庭の子どもほど入学を遅らせる傾向があるため、生まれ月の格差を是正する代わりに、家庭環境による格差を拡大させる可能性も懸念されています。
日本でできる対策
日本では入学時期を遅らせる制度は一般的ではありませんが、例えば入試において生まれ月を考慮する、出席番号を生まれ月順にするといった工夫で、早生まれの子どもへの配慮を行うことができます。
教育評論家の山田一郎氏(仮名)は、「生まれ月による格差をなくすためには、教育現場でのきめ細やかな対応が不可欠です。早生まれの子どもの発達段階を理解し、個々に合わせたサポートを提供することが重要です」と述べています。
まとめ
生まれ月が子どもの発達や将来に影響を与えるという「相対年齢効果」。その影響は学力だけでなく、非認知能力や収入にまで及ぶ可能性があります。教育関係者だけでなく、親もこの事実を認識し、早生まれの子どもへの適切なサポートを心がけることが大切です。
参考文献
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