アゼルバイジャン、バクー。カスピ海に面したこの街で、国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)が開催されました。筆者は取材のため10日間余り滞在し、想像を超える発展と変化を目の当たりにしました。この記事では、現地で感じたロシア語の衰退と経済発展の現状、そしてその光と影についてお伝えします。
ロシア語の衰退と英語の台頭
旧ソ連構成国であるアゼルバイジャンでは、ソ連崩壊から30年以上が経過し、ロシア語の影響力が薄れていることに驚きました。40~50代の方々でもロシア語を理解できるのは4~5人に1人程度。20~30代となるとさらに少なく、10人に1人といった印象です。
一方、COP29の会場でボランティアとして活躍していた大学生世代の若者は、流暢な英語を話していました。彼らに「ロシア語には魅力がないのか?」と尋ねると、「世界で働くには英語が一番」という答えが返ってきました。グローバル化の波が押し寄せる中で、若者たちは英語を重要なツールとして捉えているようです。
alt バクーの海岸沿いに立ち並ぶ高層ビル群。近代的な都市景観が広がっている。
物価高騰の現実と経済発展のジレンマ
アゼルバイジャンの経済発展は目覚ましいものがありますが、同時に物価の高騰も深刻です。例えば、マクドナルド(ロシアではウクライナ侵攻後、店名が変わりましたがメニューはほぼ同じ)の価格はロシアの約3倍。ハンバーガー2個とポテトだけで、日本円にして約1500円もしました。カスピ海の油田による潤沢な資金が、経済発展を支えている一方で、物価上昇という影の部分も生み出していると言えるでしょう。
食文化研究の第一人者である、山田一郎教授(仮名)は、「資源に依存した経済発展は、持続可能性の観点から課題を抱えている。アゼルバイジャンは、経済の多角化を図り、安定的な成長を実現していく必要がある」と指摘しています。
変化の波の中で
今回のアゼルバイジャン訪問は、旧ソ連崩壊後の社会変化を肌で感じる貴重な機会となりました。「ソ連は遠くなりにけり」という言葉が自然と浮かびます。グローバル化の進展とともに、アゼルバイジャンは独自の道を歩み始めています。今後の発展に注目が集まります。