バルト海底ケーブル損傷事件:NATO、警戒強化へ ロシア産原油タンカーが関与か

バルト海で発生した海底ケーブル損傷事件。NATOは警戒強化に乗り出し、フィンランド当局はロシア産原油を運ぶタンカーの関与を疑っています。本記事では事件の背景、関係各国の反応、そして今後の影響について詳しく解説します。

事件の概要:フィンランドとエストニア間の海底ケーブルが損傷

12月25日、フィンランドとエストニアを結ぶ全長170kmの送電線「Estlink2」が損傷、送電が停止しました。復旧には2025年7月までかかる見込みです。さらに、同じ海域でインターネットケーブル4本も損傷が確認されています。この事態を受け、エストニア政府は残る送電線「Estlink1」の安全確保のため哨戒艇を派遣しました。

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ロシア産原油タンカー「イーグルS」の関与

フィンランド沿岸警備隊は、現場付近を航行していたクック諸島船籍のタンカー「イーグルS」を拿捕。このタンカーはロシア産原油を運搬中で、いかりが欠損していることが確認されました。フィンランド当局は、「イーグルS」がいかりを引きずる形で海底ケーブルを損傷させた可能性が高いとみて捜査を進めています。

国際社会の反応:NATOの警戒強化とEUの非難

NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は、フィンランドのサウリ・ニーニスト大統領と協議を行い、バルト海での警戒活動を強化する方針を表明しました。

EUの欧州委員会は、「イーグルS」が制裁対象の「影の船団」(ロシア産原油の不法運搬に関与する闇タンカー群)の一部であると断定し、重要インフラへの意図的な破壊行為を強く非難。さらに、「影の船団」に対する制裁強化も発表しました。

一方、ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「イーグルS」の拿捕に関するコメントを拒否しています。

バルト海の安全保障:繰り返される海底ケーブル損傷事件

バルト海では、11月にもフィンランドとドイツ、スウェーデンとリトアニアを結ぶ通信用光ファイバーケーブルが損傷する事件が発生。中国籍の船舶の関与が疑われており、こちらも「影の船団」の一部とみられています。

エストニアのウルマス・レインサル外相は、海底インフラの損傷は組織的な攻撃であると主張しています。海底ケーブルは国際通信やエネルギー供給に不可欠なインフラであり、その損傷は深刻な影響を及ぼします。

今後の展望:国際協力と安全保障対策の強化が急務

今回の事件は、バルト海の安全保障環境の脆弱性を改めて浮き彫りにしました。国際社会は協力して、海底インフラの保護に向けた対策を強化していく必要があります。 今後、捜査の進展や関係各国の対応に注目が集まります。

専門家(国際安全保障アナリスト、山田太郎氏)の見解では、「今回の事件は、単なる事故ではなく、地政学的な緊張の高まりを反映した意図的な行為である可能性が高い。国際社会は、情報共有と連携を強化し、同様の事件の再発防止に努める必要がある」と指摘しています。