韓国旅行で困惑?「グーグルマップが使えない」不満急増の背景

韓国を訪れる外国人観光客の間で、主要な地図アプリであるグーグルマップが十分に機能しないことへの不満が急速に高まっています。観光客の増加が続く一方で、道案内や店舗情報といった基本的な観光インフラが整っていない現状が浮き彫りになっています。

韓国観光公社が発表した「2024年観光不便申告総合分析書」によると、昨年1年間に寄せられた観光に関する不満は1543件で、前年比71.1%増加しました。そのうち不満の最も多かったアプリは「グーグルマップ」で、全体の30.2%を占めています。

韓国・ソウル明洞でスマートフォンを見ながら観光する外国人観光客韓国・ソウル明洞でスマートフォンを見ながら観光する外国人観光客

高まる地図アプリへの不満と具体的な問題点

グーグルマップに関する不満の中で特に多かったのが、「徒歩ルート案内など特定機能の制限」(31.2%)です。実際、グーグルマップでは韓国内で徒歩や車でのルート案内が利用できず、利用可能なのは公共交通案内のみとなっています。

例えば、ソウル・龍山駅から人気観光地である「HYBE本社」までのルートをグーグルマップで検索しても、検索結果が表示されませんでした。一方、韓国の主要な地図アプリであるネイバー地図では、正確な位置と徒歩経路まで詳細に案内されます。

このようなナビゲーション機能の差は、長距離移動でも顕著です。釜山への移動手段を検索した場合、ネイバー地図はKTX、高速バス、航空など13の交通手段を案内しましたが、グーグルマップは7つにとどまり、情報の精度と量の両面で劣る状況が見られます。

なぜグーグルマップは韓国で機能しないのか? 国家主権と安全保障の壁

では、なぜ韓国でグーグルマップは日本や他の多くの国のようにスムーズに機能しないのでしょうか。その背景には、韓国政府とグーグルの間の根深い問題があります。韓国政府は、グーグルがサービス展開に必要とする1:5000の高精度地図データの海外搬出を、軍事施設や国家機密が含まれるという安全保障上の理由から拒否し続けています。

グーグルが韓国内にサーバーを設置すればこの問題は解決可能とされていますが、グーグルは15年間それを拒んできました。IT業界関係者は、この状況について単なる観光インフラの問題ではなく、「国家主権と産業戦略の問題だ」と指摘しています。地図データを安易に渡せば、国内の中小企業やスタートアップが依存する地図APIの費用が高騰するリスクも懸念されています。

実際、グーグルに1:5000レベルの高精度地図を提供している国はほとんどなく、グーグルが詳細なサービスを提供できているのは、自社投資によって現地データを整備し、交通情報などと連携させている場合に限られます。

現状:ローカルアプリの優位と政府の課題

このような状況のため、観光客にとって最も重要な「ナビゲーション機能」や「店舗情報の正確性」において、グーグルマップは韓国のローカル地図アプリに比べて依然として劣るとの指摘が多くあります。

韓国政府は昨年末の「国家観光戦略会議」で、外国人が母国語で地図サービスを利用し、決済も簡便に行える環境整備を打ち出しました。しかし、不満件数が大幅に増加している現状を見るに、目に見える進展は乏しいと言わざるを得ません。文化体育観光省は、「地図アプリの改善は観光インフラの核心課題であり、政府として責任をもって取り組む」と述べていますが、具体的な解決策の早期実現が待たれます。

韓国を訪れる外国人観光客にとって、スムーズなナビゲーションは観光体験の質を大きく左右する要素です。国家安全保障と利便性、そして産業振興という複数の課題が絡み合う中で、この地図アプリ問題をいかに解決していくかが、今後の韓国観光にとって重要な焦点となります。

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