年末の慌ただしさの中、街角で見かける交通誘導員の姿。寒空の下、黙々と働く彼らの姿に、2025年以降の日本の高齢化社会の縮図が垣間見えます。今回は、75歳で交通誘導のアルバイトをされている佐々木浩一さん(仮名)の現状を通して、年金問題の深刻さを改めて考えてみましょう。
年末の稼ぎどき、それでも生活は苦しい
年末は道路工事が増えるため、交通誘導のアルバイトの需要も高まります。佐々木さんもこの時期は稼ぎどきだと話します。日給は約1万2,000円、時給換算で1,480円。1ヶ月で24万円弱の収入になりますが、手取りは18万円ほど。一見悪くない金額に思えますが、佐々木さんの年金は月5万円にも満たないため、生活は決して楽ではありません。
交通誘導員の仕事風景
厚生年金未加入の過去、後悔先に立たず
佐々木さんは高校卒業後、いくつかの仕事を経験してきました。しかし、20年近く勤めた会社が厚生年金に未加入だったことが、現在の低年金の大きな原因となっています。「当時は年金への意識が低く、自分で確認することもなかった」と悔やむ佐々木さん。給与明細をよく見ていれば気づけたかもしれない、と後悔していますが、すでに会社は存在せず、国からの救済もありません。
高齢者の年金事情と佐々木さんのケース
厚生労働省の「令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金受給者の平均月受給額は国民年金と合わせて14万6,429円。しかし、佐々木さんのように月5万円未満の受給者は全体のわずか1.87%。これは、平均から大きくかけ離れた深刻な低年金といえます。生活資金研究所の山田一郎氏(仮名)は、「高齢者の生活設計において、年金は重要な収入源。想定外の低年金は生活を圧迫し、不安定な老後生活につながる」と警鐘を鳴らしています。
将来への不安、そして私たちへの教訓
佐々木さんのケースは、決して他人事ではありません。年金制度への理解不足や、将来への備えの甘さが、老後の生活を苦しいものにする可能性があることを示しています。私たち一人ひとりが、自身の年金についてしっかりと理解し、将来設計を見直す必要があるのではないでしょうか。
自分自身の年金、きちんと把握していますか?
「ねんきん特別便」や「ねんきんネット」を活用して、将来受け取れる年金額を確認しましょう。また、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)など、自助努力で老後資金を準備する方法も検討してみてください。専門家のアドバイスを受けることも有効です。
佐々木さんのような高齢者が安心して暮らせる社会を実現するためには、社会保障制度の充実だけでなく、個々人の意識改革も不可欠です。