米アラスカ州でのロシアのプーチン大統領との首脳会談後、ドナルド・トランプ大統領のウクライナ情勢に対する姿勢が顕著にロシア寄りへと変化している。今週ホワイトハウスで予定されているウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領との会談では、トランプ氏がロシア側の主張を受け入れるよう迫る可能性が高まっており、その動向が世界の注目を集めている。この会談が、長期化するウクライナ紛争の和平交渉にどのような影響を与えるか、国際社会が固唾をのんで見守っている状況だ。
トランプ大統領のウクライナ政策転換とロシア寄りの姿勢
トランプ大統領は16日未明、米露首脳会談が開催されたアラスカ州からホワイトハウスへ戻ると、自身のSNSで18日にゼレンスキー氏の訪問を受けることを公表した。この際、「すべて順調に進めば、プーチン氏との会談を調整する。数百万人の命が救われる可能性がある」と発言し、早期の和平実現への意欲を示した。
当初、トランプ氏は即時停戦の実現を優先し、その後和平交渉を進めるというウクライナ側の主張に同調する姿勢を見せ、必要であればロシアに「厳しい経済制裁」を課す方針を示唆していた。しかし、プーチン氏との会談ではその強硬な姿勢を崩すことができず、停戦ではなく「和平協定の直接締結」というロシア側の時間稼ぎ戦術に同調する「劇的な方針転換」(米紙ワシントン・ポスト)を見せた。さらに、「土地の交換」に関しては、プーチン氏の「言い値」をそのままゼレンスキー氏に伝え、「取引に応じるべきだ」と促しているとされる。
米ロ首脳会談後のトランプ大統領の動向を示す写真
ウクライナ安全保証の議論とゼレンスキー大統領の見解
ウクライナの「安全の保証」に米国が参画する可能性については、米国のスティーブン・ウィトコフ中東担当特使が17日、米CNNの番組で言及した。同特使は、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国の相互防衛義務を定めた「北大西洋条約第5条」に準じた保護を、米国がウクライナに提供することをプーチン氏が認めたと主張した。これはウクライナにとって大きな意味を持つ可能性がある一方、その具体的な実現方法が焦点となる。
しかし、ゼレンスキー大統領は17日の記者会見で、この安全保障の枠組みについて懐疑的な見解を示している。「どのように機能するのか、米国と欧州諸国が果たす役割はどのようなものなのか、まだ何も明らかになっていない」と述べ、具体的な詳細が不透明であることを強調した。これは、約束の実現性や実効性に対するウクライナ側の懸念を反映している。
ウクライナ東部ドネツク州、ロシア占領地区で砲撃により損壊した集合住宅の様子
三者会談の可能性とウクライナへの圧力
米ニュースサイト・アクシオスによると、トランプ氏は22日までにプーチン氏とゼレンスキー氏を交えた「三者会談」の開催を目指しているという。ゼレンスキー氏は三者会談の開催そのものには支持を表明しているものの、トランプ氏がこの会談を、ウクライナがロシアの提案を受け入れた後の開催を想定している点が問題視されている。
もしウクライナがロシアの提案受け入れを渋る場合、トランプ氏の批判の矛先がウクライナへと向かうリスクが指摘されており、これはウクライナに対する国際的な圧力を増大させる可能性がある。今後のトランプ氏とゼレンスキー氏の会談、そして三者会談の動向が、ウクライナ情勢の今後の展開に大きな影響を与えることは必至であり、その結果が国際社会に及ぼす波紋は計り知れない。
参考文献
- Yahoo!ニュース(読売新聞): 「トランプ氏、プーチン氏と会談後ロシア寄りの姿勢強める…ゼレンスキー氏に「取引応じるべきだ」促す可能性」