韓国・全羅南道務安国際空港で12月29日に発生したチェジュ航空機の着陸事故。滑走路から逸脱したこの事故で、空港消防隊の出動が遅れたことが明らかになり、波紋が広がっています。今回は、事故当時の状況と消防隊の出動遅れの背景、そして専門家の意見を交えながら、この問題について詳しく解説します。
事故発生から消防隊出動までのタイムライン
事故発生時の状況を整理すると、管制塔と消防隊の連携に疑問が生じます。中央日報の取材によると、事故機は午前9時3分に滑走路の外壁に衝突。管制塔は衝突直後の9時4分に消防隊に出動を指示し、消防隊は9時5分に現場に到着しました。
しかし、国土交通部の事故調査委員会によると、操縦士がメーデーを発信したのは9時5分よりも6分早い8時59分。つまり、管制塔はメーデー発信から6分後、機体が実際に衝突した後にようやく消防隊の出動を指示したのです。
務安国際空港で発生した旅客機が滑走路から外れた事故現場の様子
専門家からの厳しい指摘
航空安全の専門家は、務安空港の初期対応の不備を指摘しています。匿名の関係者A氏は、「航空機事故の場合、航空燃料による火災の危険性が高いため、迅速な初期消火が不可欠です。消防隊の早期出動は非常に重要」と述べています。
胴体着陸の場合、大規模火災に発展する恐れがあるため、1回目の着陸失敗時に管制塔は消防隊を滑走路付近に待機させるべきだったという意見も出ています。
カトリック関東大学航空運航学科のチョン・ユンシク教授は、「務安空港は、光州空港と交信後、着陸直前に務安空港に周波数を変更する必要があるため、緊急事態への対応時間が不足していた可能性もある」と指摘しています。
通常時と異なる対応
通常、機体欠陥による胴体着陸の場合、空港は滑走路に特殊な泡を散布して着陸時の衝撃を軽減しますが、今回の事故ではこの措置は取られませんでした。
韓国空港公社によると、務安空港消防隊は消防車3台、指揮車1台、救急車1台などを保有し、35人の隊員が4組2交代で勤務しています。
務安空港の特殊な事情
務安空港の管制体制の特殊性も、今回の事故に影響を与えた可能性があります。光州空港との連携、周波数の変更手順など、他の空港とは異なる運用方法が、緊急時における迅速な対応を難しくした可能性も考えられます。
消防隊員が旅客機墜落事故の収拾作業にあたる様子
今後の調査と課題
今回の事故は、空港における緊急対応体制の重要性を改めて浮き彫りにしました。管制塔と消防隊の連携、初期対応の迅速性、そして空港特有の事情を考慮したマニュアル整備など、様々な課題が明らかになっています。今後の徹底的な調査と再発防止策の策定が急務です。