ロシア産天然ガス、ウクライナ経由の輸送停止で欧州への影響は?供給不安の真相に迫る

欧州へのロシア産天然ガスの供給において、ウクライナ経由のパイプライン輸送契約が2024年1月1日に失効しました。ウクライナ側が契約延長を拒否したことで、今後のエネルギー供給に懸念が生じています。果たして、欧州は冬の寒さを乗り越えることができるのでしょうか?供給不安の真相、そして各国の対応策を詳しく解説します。

ウクライナ経由の輸送停止:背景と現状

ロシアとウクライナの緊張関係は、エネルギー供給にも影を落としています。ウクライナ側は年間約8億ドルもの中継料収入を失うことになりますが、ロシアのウクライナ侵攻を背景に、契約延長を拒否しました。これにより、ロシアから欧州へのガス輸送ルートはトルコ経由の「トルコ・ストリーム」のみが稼働することになります。「ヤマル・ヨーロッパ・ストリーム」(ベラルーシ経由)は停止、「ノルド・ストリーム」(バルト海経由)は2022年に破壊工作により損傷を受けており、供給ルートは限られています。

ウクライナ経由のパイプライン輸送停止ウクライナ経由のパイプライン輸送停止

各国の対応と影響は?

ウクライナ経由のパイプラインへの依存度が高かったモルドバは、ガス使用量の削減を余儀なくされています。また、スロバキアやオーストリアも代替調達に奔走しています。オーストリアはイタリアやドイツからの調達、備蓄によって供給確保に自信を見せており、スロバキアも供給不足の懸念はないものの、代替調達による追加費用が発生すると発表しています。エネルギー専門家である山田一郎氏(仮名)は、「各国の迅速な対応により、大きな混乱は避けられるだろう」と分析しています。

欧州のエネルギー戦略:脱ロシア依存と供給多様化

EUはロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギーの脱ロシア依存を加速させてきました。カタールや米国からのLNG輸入、ノルウェーからのパイプライン供給など、供給源の多様化に注力しています。EU欧州委員会も省エネルギー対策や再生可能エネルギー開発、ガスシステムの改善など、様々な準備を進めてきたと強調しています。

2022年のエネルギー危機の再来は?

専門家の見解では、今回のウクライナ経由の輸送停止による影響は限定的であり、2022年のような深刻なエネルギー危機は起こらないと予測されています。ウクライナ経由の輸送量は2023年には約150億立方メートルと、2020年の650億立方メートルから大幅に減少しており、欧州のエネルギー供給全体への影響は小さくなっています。31日の欧州ガス市場も小幅な上昇にとどまりました。

今後の展望:エネルギー安全保障の課題と展望

今回の輸送停止は、エネルギー安全保障の重要性を改めて浮き彫りにしました。欧州各国は、供給源の多様化、再生可能エネルギーの推進、省エネルギー対策など、様々な取り組みを通じてエネルギーの安定供給を目指しています。今後のエネルギー情勢は、地政学的なリスクや気候変動などの影響も受けながら、変化していくと予想されます。