日本郵便が、運転手への法令で定められた乗務前後の点呼を広範にわたり適切に行っていなかったとして、国土交通省から郵便事業に用いるトラック約2500台の業務許可を取り消す方針が通知されたことが明らかになりました。これは大手事業者に対しては極めて異例の厳しい処分方針です。
発端は2025年1月、兵庫県内の郵便局で酒気帯び確認や健康確認のための点呼が数年前からほぼ行われていなかったことが発覚したことです。これを受けて日本郵便が全国の郵便局を調査した結果、2025年4月に公表された調査結果では、全国3188の郵便局のうち75%にあたる2391の郵便局で、配達を行う運転手への点呼が適切に行われていなかったことが判明しました。
国土交通省は特別監査を進めましたが、監査の中で、点呼を実施したかのように記録を改ざんするケースなどが多数確認されました。これらの重大な法令違反を受け、国交省は日本郵便に対し、約2500台のトラックの事業許可を取り消す方針を通知しました。現時点では、郵便用の赤い軽自動車は処分対象に含まれていませんが、今後使用停止などの処分になる可能性も示唆されています。
日本郵便の点呼不実施問題に関するFNNプライムオンラインの報道画面
「毎年どんどんやめていく」現場が語る“人手不足”の常態化
「サン!シャイン」の取材に応じた、2024年まで関東地方の郵便局で配達員として勤務していた男性は、今回の異例の処分に「驚いた」と語ります。現場では点呼は「ほぼやってなかった」と言い、「やれという号令はかかりますけど、みんな正直言うと無視していました。それがもう当たり前になっていた」と、点呼不実施が常態化していた実態を明かしました。部長たちも厳しく言わず、支社からの臨時点検(監査)の時だけは実施していた状況でした。
男性は、本来重要なはずの点呼が行われなくなった背景には、配達員の人手不足が続いていることがあると指摘します。「体調もよっぽど悪くない限り、言い出せない。『きょう、ちょっと体調良くないな』と思っても人がいなさすぎて、やっぱりもう代わりの人間がいないから、言い出せない状況はありましたよね」。こうした「普通じゃない状況が普通になっていた」ことが、毎年多くの配達員が辞めていく根本的な原因になっていると述べました。
現役局員も感じる現場の厳しさ「何のために一生懸命仕事しているのか」
現役の郵便局員も、現在の配達員の状況について「厳しさ」を感じていると言います。現場で働く人々の様子を見る限り、皆忙しいため、「実際にみんながちゃんと呼気をやってというのは、ちゃんとやってなかったという話を聞いた時に、あまりこう…『まあそういうこともあったんだろうな』というような印象を受けてしまう」と、現場の実態に対するある種の理解を示唆しました。
そして、一社員として一生懸命仕事をしているにも関わらず、「乗り越えては不祥事が起き、乗り越えては不祥事が起き」という状況が続くことに、「正直、働いている側のモチベーションというか、気持ちとしてもかなり…何のために一生懸命仕事しているのか?というような気持ちになってしまいます」と、繰り返される問題が働く人々の士気を低下させている現状を語りました。
日本郵便「速やかに検討」再発防止へ向け対応
今回の点呼不実施および広範な法令違反、そしてそれに対する国土交通省の処分方針について、日本郵便は以下のようなコメントを発表しています。「日本郵便においては、点呼の確実な実施及び飲酒運転の根絶はもちろんのこと、今後予定されている行政処分の内容及び、お客さまや事業への影響等を精査するとともに、今後の具体的な対応について、速やかに検討してまいります」。今後は法令遵守と再発防止に向けた具体的な対策が求められます。