済州航空機事故:緊迫の9分間、何が起きたのか?―務安空港での胴体着陸の真相に迫る

済州航空機が韓国・務安国際空港で胴体着陸に至った緊迫の9分間を詳細に振り返り、事故の真相に迫ります。専門家の見解も交えながら、あの日の出来事を紐解いていきましょう。

済州航空7C2216便、バンコク発務安行き―順調な飛行から一転

2024年1月29日、タイ・バンコクから韓国・務安国際空港へ向かっていた済州航空7C2216便。乗客175名、乗務員6名を乗せたこの便は、現地時間午前1時30分にバンコクを出発。午前8時30分の到着予定時刻から約30分遅れの午前8時54分、務安空港管制塔に着陸許可を求めました。それまでの飛行は順調だったとされています。

済州航空機事故の現場済州航空機事故の現場

鳥衝突の警告、そして「メーデー」―悪夢の始まり

着陸許可から3分後、管制塔は航空機に「鳥の移動に注意」と一般的なアドバイスを送りました。しかし、そのわずか2分後、操縦士から緊急事態を知らせる「メーデー」が3回発せられます。同時に「バードストライク(鳥との衝突)、ゴーアラウンド(復航)」との報告も。

復航を試みるも…制御不能に陥った機体

草堂大学航空教育院のチョン・ウォンギョン教授によると、ゴーアラウンド時にはエンジン出力最大化、着陸装置収納、フラップ引き込みを行いながら高度を上げるのが標準的な手順です。しかし、済州航空機は何らかの理由で高度を上げられず、滑走路左側上空を通過後、急激に右旋回。当初の着陸予定だった01番滑走路ではなく、反対側の19番滑走路への緊急着陸を管制塔に伝えました。国土交通省によると、この変更は管制官との合意の上で行われたとされています。右エンジンは既に炎上しており、01番滑走路に戻るには空港を一周する必要がありましたが、復航は失敗に終わり、19番滑走路が選択されたと見られています。

胴体着陸、そして爆発―残された謎

着陸装置は下りず、フラップも展開されないまま、胴体着陸を試みた航空機。速度を制御できないまま滑走路を滑り、午前9時3分、滑走路端から約200m離れたローカライザーに衝突、爆発炎上しました。

事故原因の究明へ―残された疑問点

なぜ機体は制御不能に陥ったのか?なぜ操縦士は胴体着陸を選択せざるを得なかったのか?多くの疑問が残されています。今後の徹底的な調査によって、事故の真相が明らかになることを期待します。航空安全の向上のためにも、この事故から学ぶべき点は多いはずです。