務安空港胴体着陸事故:チェジュ航空機長の勇気と献身に涙する人々

韓国務安国際空港で発生したチェジュ航空2216便の胴体着陸事故は、搭乗者181名のうち179名が死亡するという痛ましい結果となりました。事故原因の究明が進む中、最後の瞬間まで乗客の安全を守ろうとしたハン機長(46)の勇気と献身的な行動に、多くの人々が涙しています。

最後の瞬間まで乗客の安全を願った機長

事故直前の機内の様子を捉えた映像には、操縦席でハン機長が頭上のパネルを操作する姿が映っていました。専門家によると、これは油圧関連のスイッチを操作し、機体の摩擦を最大限に高めることで衝撃を軽減しようとしたものと推測されます。カトリック関東大学航空運航科のチョン・ユンシク教授は、「機長と副機長は最後の瞬間まで操縦桿を握り、死闘を繰り広げたであろう」と語っています。

操縦席でパネルを操作する機長操縦席でパネルを操作する機長

元チェジュ航空の乗務員ソンさん(33)は、ハン機長を「いつも乗務員によくしてくれることで有名な機長だった」と振り返り、涙をこらえながらその人柄を語りました。ソンさんは、ハン機長が最年少の自分に特に気を配ってくれたこと、他の同僚にも優しく接していたことを明かし、「どうしてこんなことが起こったのか」と無念さをにじませました。

務安空港に響く追悼の声

務安国際空港の合同焼香所には、ハン機長を追悼する人々が次々と訪れています。ソンさんはソウルから4時間半かけて焼香所に駆けつけ、ハン機長との思い出を胸に献花しました。空港の階段には、ハン機長と共にフライトした乗務員からのメッセージが貼られ、「乗客の安全のため最善を尽くしてくれて感謝する。永遠に忘れません」と綴られています。

事故現場近くにも、ハン機長への追悼メッセージが数多く寄せられています。ハン機長の兄とみられる人物は、「あなたは立派だった。十分によくやったのだから、今は暖かいところで幸せになってほしい」とメッセージを残しました。

空港の階段に貼られた追悼メッセージ空港の階段に貼られた追悼メッセージ

SNSでも追悼の輪が広がる

SNS上でも、ハン機長の勇気ある行動に称賛の声が上がっています。「最後の瞬間までコックピットパネルに手が…。あなたは最善を尽くしたと信じる」「胴体着陸は安定的に見えた。対処する余裕もなく起きた爆発に心が痛い」といったコメントが寄せられ、多くの人々が悲しみに暮れています。

ベテランパイロットの突然の事故

ハン機長は空軍学士将校出身で、飛行時間6823時間を誇るベテランパイロットでした。2014年にチェジュ航空に入社し、2019年3月に機長に昇格。今回の事故は、タイ・バンコク発務安国際空港行きのフライト中に発生しました。鳥の群れと衝突後、胴体着陸を試みたものの、空港滑走路外壁に衝突し爆発炎上しました。韓国国土交通部によると、胴体着陸時に両側のエンジンが故障し、ランディングギアやスピードブレーキなどの電源がシャットダウンしていたと推定されています。

事故原因の究明が急がれますが、ハン機長の勇気と献身的な行動は、多くの人々の心に深く刻まれることでしょう。