務安国際空港事故:パイロット証言から浮かび上がる知られざる実態

務安国際空港で起きた旅客機胴体着陸事故。その背景には、滑走路の計器着陸装置(ローカライザー)に設置されたコンクリートの丘の存在、バードストライクの危険性、そして想像以上に多忙な空港の実態があったことが、パイロットの証言から明らかになってきました。この記事では、事故の真相に迫り、知られざる務安空港の実態を紐解いていきます。

見えなかったコンクリートの丘:パイロットの証言

7年間務安空港を利用してきたというベテラン飛行教官兼パイロットのA氏は、ローカライザーに設置されたコンクリートの丘について、上空からはただの土盛に見え、コンクリート製だとは全く知らなかったと証言しました。空港チャートなどにも記載がなく、特別な案内も受けていなかったため、他のパイロットもその存在を知らなかった可能性が高いとのことです。

韓国務安(ムアン)国際空港事故現場で30日午後、警察と消防、国立科学捜査研究院の関係者が合同で現場鑑識を実施している。韓国務安(ムアン)国際空港事故現場で30日午後、警察と消防、国立科学捜査研究院の関係者が合同で現場鑑識を実施している。

この証言は、事故原因究明において重要な手がかりとなるでしょう。航空安全専門家の佐藤一郎氏は、「パイロットがコンクリートの丘の存在を認識していなかったとすれば、着陸時の判断に影響を与えた可能性は否定できない」と指摘しています。

バードストライクの危険:日常的な脅威

A氏はバードストライクについても言及し、体感的には年に一度程度は翼などに被害が発生していたと証言しました。務安空港では、最近では毎日鳥類の活動案内が出ており、管制官も滑走路に鳥がいれば連絡をくれるなど、対策は取られていたものの、大型鳥類はパイロットが避けるしかないのが現状だと説明しています。

大型旅客機の場合、バードストライクへの対処は小型機よりもはるかに困難であるため、今回の事故においてもバードストライクが影響した可能性が懸念されます。

想像以上に多忙な空港:訓練飛行の拠点

A氏は、務安空港は暇な空港と思われがちだが、実際は非常に忙しいと証言しました。国内で訓練が可能な空港が少ないため、多くの訓練機関が務安空港で飛行教育を行っているとのことです。

別の民間パイロットも、中源大学、交通大学、草堂大学、慶雲大学、清州大学など、多くの大学航空学科が務安空港を飛行教育場として使用していると証言しています。教育生やパイロットは、経験豊富な機長と比べると相対的に熟練度が低く、管制官の負担も大きかったと推測されます。

旅客機との衝突で破損したローカライザー旅客機との衝突で破損したローカライザー

これらの証言から、務安空港は想像以上に多忙な空港であり、そのことが事故の一因となった可能性も考えられます。航空管制の専門家である田中美咲氏は、「多忙な空港では、管制官の負担が増加し、ヒューマンエラーのリスクが高まる可能性がある」と警鐘を鳴らしています。

事故の真相究明へ:今後の課題

今回の事故は、様々な要因が複雑に絡み合って発生した可能性があります。コンクリートの丘の存在、バードストライクの危険性、多忙な空港の実態など、パイロットの証言から浮かび上がった様々な課題を踏まえ、徹底的な調査と再発防止策の策定が急務です。