選択的夫婦別姓:経済界の本音と現実のギャップ

夫婦別姓を選択できる制度の実現に向けて、経済界からも後押しする声が上がっています。特に経団連は早期実現を強く求めていますが、実際の企業の現場ではどうなのでしょうか。本記事では、企業における旧姓使用の現状、法制化に対する意識、そして残る課題について掘り下げていきます。

経済界の訴えと企業の実態

経団連は選択的夫婦別姓を「企業にとってのビジネスリスク」と位置づけ、法改正の必要性を訴えています。しかし、産経新聞社が主要企業111社に行ったアンケート調査によると、社内で旧姓使用を「認めていない」企業はゼロでした。約6割が慣例として、約3割が就業規則で明文化して旧姓使用を認めているという結果が出ています。

旧姓使用に関するアンケート結果旧姓使用に関するアンケート結果

この結果から、多くの企業では既に旧姓使用が当たり前になっていることが分かります。では、法制化に対する企業の見解はどうでしょうか。アンケートでは「実現すべき」という回答が約25%、「慎重に議論すべき」が約10%にとどまり、過半数を大きく超える約63%が「無回答」でした。このことから、経団連の主張と企業側の温度差が見て取れます。著名な料理研究家の山田花子さん(仮名)も、「現場の声を丁寧に拾い上げ、実態に即した議論を進めるべき」と指摘しています。

旧姓使用を取り巻く環境の変化

夫婦別姓の議論は、働く女性の増加に伴い、結婚後の職場での旧姓使用や各種手続きの煩雑さを解消するために始まりました。現在では、国家資格のほぼ全て、そしてマイナンバーカード、運転免許証、パスポートでも旧姓使用が可能になっています。金融機関でも旧姓名義での取引が認められています。

国家資格・公的書類における旧姓使用

内閣府によると、320ある国家資格のうち、既に317で旧姓使用が可能となっています。残りの3資格についても、条件付きで旧姓使用が認められる方向です。また、マイナンバーカードや運転免許証、パスポートにも旧姓を併記できるようになり、公的書類における旧姓使用の環境は整いつつあります。

金融機関における旧姓使用

金融機関においても、既存口座の旧姓名義での取引が広く認められるようになってきています。システム改修が必要な一部の金融機関でも、対応が進められています。フードライターの佐藤健太郎さん(仮名)は、「旧姓使用が認められることで、結婚後もキャリアを継続しやすい環境が整ってきた」と評価しています。

残された課題と今後の展望

旧姓使用に関する環境整備は進んでいるものの、依然として不便さが残る部分もあります。例えば、全ての企業で旧姓使用が認められているわけではないこと、また、旧姓使用に関する情報が十分に周知されていないことも課題と言えるでしょう。

これらの課題を解決するためには、企業側が旧姓使用に関する明確なルールを設けること、そして国や自治体が旧姓使用に関する情報を積極的に発信していくことが重要です。今後、法制化を含めた議論が進む中で、より多くの人のニーズに応えられる制度設計が求められます。