中国で若者の結婚を促進する政策が注目を集めています。果たしてこれは愛を育む取り組みなのか、それとも国家による圧力なのか?湖南省長沙市に設立された「婚育文化街」と「結婚学校」を取材し、中国の若者の結婚観を探ります。
愛と結婚をテーマにした街「婚育文化街」
湖南省長沙市の「婚育文化街」の入り口
湖南省長沙市に「愛がこの街と出会う」という看板を掲げた「婚育文化街」が誕生しました。ハートや花のモチーフ、そして「長沙の恋は超甘い」といったメッセージで彩られたこの街は、若者の結婚と出産を後押しするために地元政府が整備しました。しかし、実際に訪れてみると人通りはまばらで、その効果は未知数と言えます。
国家主導の結婚促進策「結婚学校」
長沙市の「結婚学校」内部
「婚育文化街」の目玉施設である「結婚学校」は、若者へ結婚と出産に関する情報を発信する場所です。取材に対し、スタッフは「国が重視する重要な宣伝」と強調しました。施設内には習近平国家主席の言葉が掲げられ、人口増加の重要性と「子づくりの社会的価値を尊重する」「年齢に応じた結婚と子育てを推奨する」といった国の政策が示されていました。
若者に響かないメッセージ
「結婚学校」内の展示
施設内には、「20代は精子と卵子の黄金活躍期」「高齢化と少子化が加速しているので、国は3人産むことを提唱している」といったクイズや主張が展示されています。結婚の素晴らしさを伝えるというよりも、出産を急かすような内容が目立ちました。
「結婚学校」内の展示物
長沙市民の反応は冷ややかです。30代女性は「少子化を女性だけの責任にしようとしている」と反発し、10代女性は「早く結婚しろという意味合いが出て逆効果。気分が悪くなる」と不快感を示しました。SNS上でも「中国式の恐怖だ」といった批判が殺到しています。取材陣が施設を去る際、スタッフは「SNSで批判されているから顔を隠してほしい」と依頼するなど、市民からの支持を得られていないことを自覚している様子でした。
結婚と出産:個人の選択か、国家の要請か?
中国政府の結婚・出産奨励政策は、少子高齢化という深刻な社会問題への対策として重要な役割を担っています。しかし、結婚や出産は個人の自由な選択に基づくべきものであり、国家による過剰な介入は反発を招く可能性があります。結婚と出産を取り巻く環境整備と共に、若者の価値観やライフスタイルの多様性を尊重する姿勢が求められています。