アマゾン奥地、最後の秘境に生きる「イゾラド」:未知との遭遇、そして文明社会との接点

文明社会と接触を持たない「イゾラド」。その謎に包まれた存在は、アマゾン奥地、ブラジルとペルーの国境地帯にひっそりと息づいている。NHKスペシャル「大アマゾン 最後の秘境」で彼らの姿を捉えた国分拓ディレクターの証言を元に、イゾラドの生態、そして彼らを取り巻く現状に迫る。

未知なる先住民「イゾラド」とは?

イゾラドとは、スペイン語で「隔絶された人々」を意味する。部族名、言語、正確な人口さえも不明な、まさに謎の先住民族だ。2016年当時、ペルーのアマゾン源流域でイゾラドの目撃情報が相次ぎ、住民への襲撃事件も発生していた。

アマゾン奥地のイゾラドアマゾン奥地のイゾラド

イゾラドとの接触:困難を極める道のり

イゾラドとの接触は容易ではない。彼らは文明社会の病原菌に対する免疫を持たないため、接触による感染リスクが非常に高い。接触を試みる際には、接触者側が厳重な予防措置を講じる必要がある。予防接種だけでも10種類近く必要で、イゾラドに接種するまでには、長年の信頼関係構築が必要となる。

全裸の姿で生活:独自の文化と伝統

イゾラドの生活様式は、文明社会とは大きく異なる。男性は性器の先を紐で結び、女性は一切隠すことなく生活している。腰巻きなどで隠す文化を持つ他の先住民とは異なり、極めて稀なケースと言える。文化人類学者である山田一郎氏(仮名)は、「イゾラドの文化は、人間社会の多様性を示す貴重な事例」と指摘する。

1999年の出会い:アウレとアウラの物語

国分ディレクターは1999年にブラジルで、文明社会と接触を持たずに生きてきたアウレとアウラという二人のイゾラドと出会った。彼らは、部族最後の生き残りだった。この出会いが、国分ディレクターのイゾラドへの探求の始まりとなった。

ヤノマミ族との比較:伝統文化の継承

国分ディレクターは、2009年には「最後の石器人」と呼ばれたヤノマミ族の密着取材も行った。ヤノマミ族は近代社会との接触があるものの、伝統文化を色濃く残している。イゾラドとは異なり、政府の保護を受けながら生活している点も大きな違いだ。

長期にわたる交渉と撮影の舞台裏

イゾラドの撮影許可を得るため、国分ディレクターは2013年からペルー政府との交渉を開始した。2014年秋に許可が下り、撮影隊はアマゾンへ向かった。しかし、雨季による川の増水でイゾラドは姿を消し、一旦帰国せざるを得なかった。その後、現地住民の協力のもと、別のイゾラド集団の撮影に成功した。

二つのマシュコ・ピロ族:共通の祖先を持つ別集団

撮影された二つのイゾラド集団は、どちらもマシュコ・ピロ族とされているが、互いに面識はないと推測されている。彼らはそれぞれ100~200人規模の集団で生活し、間に大きな川があるため交流は不可能と考えられている。

イゾラドの未来:保護と共存の課題

イゾラドの保護と共存は、現代社会における大きな課題だ。彼らの生活を尊重しつつ、文明社会との接点をどのように築いていくべきか、議論が必要である。

まとめ:消えゆく文化、守るべきもの

イゾラドの存在は、私たちに多くの問いを投げかける。文明社会とは異なる彼らの生き方は、人間の多様性を示す貴重な証である。彼らの文化を守り、共存していく方法を模索することが、私たちの責任ではないだろうか。