国民の可処分所得増加を期待させる「年収103万円の壁」の引き上げ。国民民主党と自民党は178万円を目指すことで合意していたはずだが、自民党側の態度が曖昧になってきています。国民民主党の玉木雄一郎代表は自民党の森山裕幹事長の発言に反論、物価高騰に苦しむ国民にとって大きな関心事であるこの問題、今後の展開が注目されます。
国民民主党と自民党、年収103万円の壁をめぐり火花
8日、熊本市での党会合で自民党の森山裕幹事長は、「財源の裏付けのない話はしてはいけない」「しっかり考えずに、イギリスの『トラスショック』のようなことが起きればえらいことになる」と発言し、大型減税に慎重な姿勢を示しました。
熊本市での党会合で発言する森山裕幹事長
これに対し、玉木代表は自身のXで、「取り過ぎの税金を国民に返せばいい」「5年間で23兆円も税収を増やし、消費税に換算すると5年間で9%分の税負担増になっています。それを3%分減税し6%分に抑えようと提案しているだけです」と反論。両党の主張は平行線をたどっています。
178万円への引き上げ合意、しかし…
そもそも、自民、公明、国民民主3党の幹事長は昨年12月、「年収103万円の壁」について、「178万円を目指して、来年から引き上げる」ことで合意していました。しかし、自民党内には慎重論も根強く、2025年度予算案のベースとなる自公の25年度与党税制改正大綱では、引き上げ額は「123万円」にとどまりました。
国民民主党は「178万円」を条件に補正予算案に賛成した経緯があり、この決定に反発。その後、3党幹事長が再協議を行い、「引き続き誠実に協議を進める」との確認書を交わしていましたが、今回の森山氏の発言は、その合意を覆す可能性も示唆しています。
専門家の見解
政治評論家の有馬晴海氏は、「森山氏は争点を『引き上げ額』から『財源』に移したが、財務省出身の玉木氏は百も承知だ。引き上げ額を抑えたい自民党と、上積みしたい国民民主党の『場外乱闘』が当面続く」と分析。少数与党の自民党にとっては、予算案成立のために国民民主党の協力が不可欠な状況であり、今後の交渉の行方が注目されます。
国民生活への影響は?
「年収103万円の壁」は、配偶者控除や扶養控除などの税制上の優遇措置を受けるための条件となっています。この壁が引き上げられることで、より多くの世帯が控除を受けられるようになり、家計への負担軽減につながることが期待されます。特にパートで働く主婦層にとっては、就労意欲の向上につながる可能性も指摘されています。
国民民主党の玉木雄一郎代表
今後の展望
物価高騰が続く中、国民の生活を支えるための施策が求められています。「年収103万円の壁」の引き上げは、そのための重要な政策の一つと言えるでしょう。自民党と国民民主党の協議の行方、そして最終的にどのような結論が出されるのか、国民生活に大きな影響を与えるだけに、今後の動向から目が離せません。