済州航空機事故:ブラックボックスに「最後の4分間」の記録なし、原因究明に暗雲

済州航空機が務安国際空港でローカライザーに衝突した事故。原因究明の鍵を握るフライトレコーダーとボイスレコーダーに、衝突直前の重要な4分間の記録がないことが判明し、調査は難航を極めています。一体何が起きたのでしょうか?この記事では、事故の現状と今後の調査の展望について詳しく解説します。

ブラックボックスの記録途絶、原因究明に大きな壁

事故調査委員会の発表によると、フライトレコーダーとボイスレコーダーには、衝突4分前の午前8時58分50秒から衝突時刻の午前9時3分までの記録が残っていませんでした。フライトレコーダーは飛行ルートや装置の作動状況を、ボイスレコーダーは操縦室内の会話や音を記録する重要な装置です。この記録の欠如は、バードストライク後のエンジンの停止状況、着陸復行の判断過程、ランディングギアの不具合など、解明すべき多くの疑問に答えるための大きな障害となっています。

衝突した済州航空機とローカライザー衝突した済州航空機とローカライザー

エンジン停止による電力供給断絶が記録途絶の原因か?

専門家は、エンジン停止による機内電力供給の断絶が記録途絶の原因だと推測しています。カトリック関東大学の航空運航学教授、チョン・ユンシク氏の見解では、両エンジンが故障し発電機も停止したことで、レコーダーへのデータ送信ができなくなった可能性が高いとのことです。通常、エンジン故障時には補助動力装置が非常電力を供給し、レコーダーへの記録を継続できますが、今回の事故ではそれも作動しなかったのか、パイロットに作動させる余裕がなかったのか、今後の調査で明らかになるでしょう。興味深いのは、別の電源系統を使用する管制交信は最後の瞬間まで記録されていた点です。

CVR補助バッテリーの不在も調査を複雑化

事故機には、2018年以降に製造された航空機に搭載が義務付けられているCVR補助バッテリーが搭載されていませんでした。このバッテリーがあれば、電力供給が断たれても10分間の記録が可能でした。事故機は2007年製造の機体で、済州航空はリースで運用していました。この点も、調査をより複雑にしている要因の一つです。

総合的な調査で真相解明を目指す

記録の欠如という大きな壁に直面していますが、事故調査委員会は、残された4分以前のレコーダー記録、エンジンや他の部品の分析、管制交信記録などを総合的に検討し、原因究明に全力を尽くすとしています。

極東大学 クォン・ボホン教授の懸念

極東大学の航空安全管理学教授、クォン・ボホン氏は、記録の欠如により事故原因の究明が推定の域を出ない可能性を指摘しています。また、帰責事由の不明確さは、今後の補償問題にも影響を及ぼす可能性があると懸念を示しています。

今後の調査の行方

今回の事故は、航空安全におけるブラックボックスの重要性を改めて浮き彫りにしました。今後の調査の進展と、そこから得られる教訓が、航空業界全体の安全向上に繋がることを期待します。