ヤマト運輸、深刻化する人手不足と盗難問題:現場ドライバーの苦悩と不安

ヤマト運輸、日本の物流を支える大企業。しかし、その舞台裏では、人手不足と盗難問題という深刻な課題に直面しています。今回は、首都圏の営業所における現場の声を元に、ヤマト運輸が抱える問題点と、その影響について詳しく解説します。

配達遅延の深刻化:スキマバイトアプリの影響

ヤマト運輸のトラックヤマト運輸のトラック

朝9時半、都内のあるヤマト運輸の営業所から、一台のトラックが出発しました。ドライバーのAさんは焦っていました。180個もの荷物を時間通りに配達できるのか、不安でいっぱいだったのです。荷物の積み込みに時間がかかり、出発が大幅に遅れてしまったことが原因でした。

Aさんは急いで配達に向かいますが、荷物が住所ごとに整理されていないこともあり、思うように進みません。時間だけが刻々と過ぎていき、ついにタイムリミットの正午を迎えてしまいます。

「遅れてしまい申し訳ございません」と謝罪するAさん。しかし、心の中では悔しさを噛み締めていました。2024年春以降、ヤマト運輸では長年仕分けを担当していたスタッフが解雇され、スキマバイトアプリ経由のスタッフが増加。これが配達遅延の一因となっているのです。

スキマバイトアプリは、単発のアルバイトをスマホで探せるサービス。若者を中心に利用者が急増しています。しかし、ヤマト運輸の関係者によると、「アプリ経由の早朝仕分けアルバイトが増えてから、ドライバーが出勤する朝8時までに荷物の仕分けや積み込みが終わらず、配達開始が遅れる日が増えました」とのこと。結果として、指定の時間帯に荷物を届けられない事態が頻発しているのです。

2024年問題と人員不足の悪循環

倉庫内倉庫内

スキマバイトアプリ経由でスタッフを集めるようになった背景には、2024年問題があります。トラック運転手不足への対策として、ヤマト運輸は日本郵便との協業を発表。それに伴い、クロネコDM便を2024年1月末で終了しました。

これにより、約2万5000人の個人事業主との契約が打ち切られました。神奈川県内の営業所で働くドライバーの男性は、「以前は早朝仕分けのパートさんがいましたが、クロネコDM便の終了で多くの人が辞めてしまいました」と語ります。

その代わりに増えたのが、スキマバイトアプリ経由のスタッフ。しかし、現場ドライバーからは「プロ意識に欠ける」「仕事が杜撰」といった不満の声が上がっています。

深刻化する盗難問題:iPhoneやポケモンカードが標的に

配達風景配達風景

さらに、都内の営業所では商品盗難も頻発しているとのこと。「アプリ経由のアルバイトが増えてから、iPhoneやポケモンカードの在庫が不自然に減る事案が増えています」とヤマト運輸関係者は証言します。

ある営業所でiPhoneが複数台紛失した際には、「スキマバイトの連中が盗んだのでは?」と疑う声も上がったそうです。物流専門家の山田一郎氏(仮名)は、「人手不足を補うためのスキマバイト活用は理解できるが、セキュリティ対策の強化も同時に進める必要がある」と指摘しています。

ヤマト運輸は、日本の物流を支える重要な役割を担っています。しかし、人手不足と盗難問題という深刻な課題に直面している現状を無視することはできません。これらの問題を解決し、より良いサービスを提供するためには、抜本的な対策が必要となるでしょう。