伊東市長 学歴問題深刻化 田久保真紀氏に辞職勧告・百条委設置 市政混乱の行方

「決議については重く受け止めております」──学歴詐称疑惑を受け、7月7日に伊東市議会で全会一致の辞職勧告決議案が可決された田久保真紀・伊東市長(51)。同日、急遽会見時間を変更し、自身の進退について表明する予定となった。今年5月の伊東市長選挙で現職を破り初当選したばかりの田久保市長だったが、当選後に発行された市の広報誌に「東洋大学法学部卒業」と記載されていた学歴が、7月2日に「卒業ではなく除籍」であったと判明し、県内外で大きな波紋を広げていた。

辞職勧告と百条委員会設置の衝撃

伊東市議会では、辞職勧告決議案の可決と同時に、地方自治法に基づく強い調査権限を持つ百条委員会の設置決議案も採択された。仮に田久保市長が辞職勧告を受け入れない場合、百条委員会による厳格な調査が行われることになる。全国紙記者はこの状況について、「百条委員会では、今回の学歴に関する経緯が公職選挙法違反にあたる『虚偽事項の公表』に該当するのか、そして6月4日に市議会議長らに対して示されたとされる『卒業証書らしきもの』が一体何だったのかが主な争点となる見込みです」と解説する。公職選挙法違反が認められた場合、その時点で市長は失職する可能性も指摘されている。

また、百条委員会の調査で直ちに法的な違反が確認されなかったとしても、市議会は閉会後に改めて不信任決議案を提出することも可能だ。いずれにせよ、市長の進退を巡る混乱は避けられない情勢となっている。当選からわずか2か月での事態の急変は、伊東市政に大きな影響を与えている。田久保市長が大学を除籍していたことを公に認めた7月2日の会見以降、伊東市役所には市民からの苦情や問い合わせが殺到し、混乱を極めているという。市の秘書課によれば、「他の部署も含めて対応にあたっており、手が回らない状態。苦情件数も正確にカウントできていない」ほど、現場は多忙を極めている状況が続いているようだ。

伊東市議会で辞職勧告決議案可決後、対応する田久保真紀市長伊東市議会で辞職勧告決議案可決後、対応する田久保真紀市長

市政への影響と現場の混乱

市政関係者は、市役所内部の状況についてさらに踏み込んで語る。「市長はもともと、即断即決というよりは慎重に物事を進めるタイプでしたが、現在、市長室には彼女の決裁を待つ書類が山積みになっています。この影響で、秘書課や広報課など、市長の判断が必要な部署だけでなく、他の部署の業務も滞り、事実上公務がストップしている部署も出てきている状況です」。市長が自身の疑惑対応に追われている状況は理解できるとしても、現場の職員たちは対応に苦慮しているという。「まだ具体的な政策に手がつけられていない状態で、もしこのまま辞任するようなことになれば、職員だけでなく市民からも相当な反感を買うことになるでしょう」と、市政停滞への懸念を示している。

田久保市長の現在の状況と心境

疑惑対応に追われ、公務が滞りがちな状況にある伊東市役所とは対照的に、田久保市長自身は連日の報道や対応に心身ともに「憔悴」しきっている様子が伺える。彼女の支援者の一人は、市長の近況について次のように明かす。「公務が終わった後も、連日夜遅くまでカフェなどで弁護士さんと打ち合わせを重ねているそうです。元々打たれ強い性格で、選挙戦なども力強く乗り越えてきましたが、さすがに今回は『少し疲れました』とか、『想定していなかったミスを犯してしまい、不甲斐ないです』と、周囲に弱気な一面を見せることもあるようです」。高齢の母親の介護も重なり、十分な睡眠が取れていないようで、関係者は市長の体調を深く案じている。「本人はまだ『辞めるわけにはいかない』という強い気持ちを持っているようですが、これまでの経緯を踏まえ、市民が納得できるような説明を果たすことができるのか…」。

進むも地獄、退くも地獄という極めて困難な状況に立たされている田久保市長。「伊東のジャンヌ・ダルク」とも称された彼女の政治的航海は、革命半ばにして座礁してしまうのか、その行方が注目される。

出典:NEWSポストセブン