近年、高校生の就職市場は空前の売り手市場となっています。大学生の求人倍率をはるかに上回る高倍率で、「令和の金の卵」とも呼ばれる高校生たち。しかし、その就職活動を支援する体制には課題も抱えているようです。この記事では、都立町田工科高校の事例を通して、高校生の就職活動の現状と課題を探ります。
売り手市場の現状:高待遇と豊富な求人
都立町田工科高校では、卒業生を招いた進路相談会が開催され、在校生たちは先輩たちのリアルな声を聞くことができました。大手精密機器メーカーに就職した卒業生は、手取り月給約26万円、ボーナスは業績次第で年間170万円にも達すると語り、生徒たちを驚かせました。企業によっては、初任給や昇進に大卒との差がある場合もあるものの、学歴による差がない企業も多く存在するようです。
卒業生と交流する高校生
同校は都立高校で唯一の総合情報科を設けており、IT業界への就職も増加傾向にあります。卒業生の相原那智さん(21歳)は、学校からのサポート体制に満足していたものの、求人票が届いてから企業決定までの期間が短かった点を課題として挙げています。
学校推薦制度と就職支援の取り組み
町田工科高校では、毎年1300件もの求人票が届き、求人倍率は約17倍にも上ります。全国の工業高校の求人倍率はさらに高く、まさに引く手あまたの状態です。卒業生の多くは有名企業や上場企業に就職しており、進路指導担当の提箸学教諭は、就職を希望する生徒には高校卒業後すぐに就職するメリットを積極的に伝えています。
高校生の就職活動では、「学校推薦」という制度が大きな役割を果たしています。企業は特定の高校に求人票を送り、生徒は学校からの推薦を受けて就職試験に臨みます。町田工科高校では、生徒の約8割が第一志望の企業に就職しています。
同校では、1年生から将来のキャリアプランを考えさせ、2年生では就職フェアを開催しています。企業担当者から直接話を聞ける機会を設けたり、インターンシップの受け入れ企業を募るなど、様々な取り組みを通して生徒の就職活動を支援しています。
就職支援体制の課題と今後の展望
高校生の就職支援は、空前の売り手市場という好況下にあっても、課題を抱えています。例えば、求人票が届いてから企業を決定するまでの期間が短いという点や、変化の激しい社会情勢に対応したキャリア教育の必要性などが挙げられます。
人材育成の専門家である山田太郎氏(仮名)は、「AIやIoTなどの技術革新が進む現代において、高校生には変化への対応力や問題解決能力が求められる」と指摘します。学校教育においても、これらの能力を育成するためのカリキュラムの充実が不可欠となるでしょう。
今後の高校生の就職支援においては、企業との連携強化、キャリア教育の充実、そして生徒一人ひとりの個性や適性に応じたきめ細やかな指導がますます重要になってくるでしょう。