高齢化社会が進む日本では、親の介護は多くの人が直面する課題です。50代といえば、仕事や家事、子育てに加え、親の介護という大きな責任を担う世代でもあります。今回は、実際に80代以上の親の介護を経験した50代女性たちのリアルな体験談を通して、介護の苦労や課題、そして彼女たちの胸中に去来した思いを探ります。
介護の始まりは突然に:入院、手術、そして介護認定
入院をきっかけに始まった介護
52歳のアイコさんは、隣県に住む84歳の父親が心臓の手術で入院したことをきっかけに介護が始まりました。病院から要介護申請を勧められ手続きを進めるも、遠方の病院との連携がうまくいかず認定まで2ヶ月以上かかってしまったといいます。
入院中の高齢男性のイメージ
退院後は在宅介護となり、週2回のデイサービスを利用するようになりました。主介護者は80歳の母親ですが、父親の入院によるショックで食欲不振に陥ってしまったそうです。アイコさんは月の半分を実家で過ごし、ケアマネージャーの選定など、母親のサポートに奔走しました。
遠距離介護の難しさ
九州に住む姉も月に一度帰省してサポートしていますが、義両親の介護も担っているため、負担はアイコさんに偏りがちです。「母が要介護状態になったら、きっと自分が介護することになる」と覚悟しているアイコさん。自分の人生と親の介護のバランスに悩みながらも、ペーパードライバー講習を受け、父親の病院送迎を手伝っています。
認知症の壁:頑固な父との向き合い、そして後悔
認知症の受診拒否
53歳のまささんは、愛媛県に住む兄家族と同居している83歳の父親の介護を経験しました。兄嫁からの相談で父親の認知機能の低下を知り、月に1~2回、帰省して1週間滞在する日々が始まりました。父親は認知症の受診を拒否したため、在宅医療に切り替え、認知症薬を処方してもらったといいます。
介護の末、父親を看取る
一時的に夜間徘徊はおさまったものの、その後トイレの失敗が続き、精神状態も不安定になりました。医師の提案で精神安定剤を服用したところ、意識を失い入院。検査の結果、肺炎と心不全が見つかり、入院から2週間後に息を引き取りました。「専門家のケアを受けていればもっと長生きできたのでは」という後悔を抱えながらも、最後まで自宅で過ごせたことが父親にとって良かったのかもしれないとまささんは語ります。
介護と仕事の両立:多忙な日々の中で見えた現実
パートと育児、そして介護
54歳のやんまさんは、12年前に夫を亡くし、2つのパートを掛け持ちしながら3人の娘を育てています。86歳の母親が膝の手術を受けたことをきっかけに介護が始まりました。
介護のイメージ
やんまさんは母親と同じ埼玉県に住んでおり、兄は同じく埼玉県、姉は東京都に住んでいます。「近くにいる人、気づいた人が手伝おう」という考えで介護が始まりましたが、パート勤務のやんまさんに負担が集中。病院の付き添い、予約、介護サービスの手配など、様々な業務をこなす日々が続きました。
限界を感じ、施設入居を決断
子供たちの受験、夫の十三回忌法要の準備、パートのストレスなど、様々な出来事が重なり、やんまさんは限界を感じました。施設入居を提案するも、母親は拒否。兄と姉に相談し、説得の末、ようやく施設に入居することができました。現在も月に2回面会に行き、実家の管理などを行っているやんまさん。「施設に入っても介護は終わらない」と実感しているといいます。
介護は終わらない旅路
今回紹介した3人の女性の体験談は、介護の現実に直面する多くの人の共感を呼ぶのではないでしょうか。介護は終わりが見えない旅路であり、喜びや達成感だけでなく、苦労や葛藤も伴います。それぞれの家庭環境や状況によって最適な介護の形は異なりますが、大切なのは、自分自身や家族の状況をしっかりと把握し、無理なく続けられる方法を見つけることです。