愛犬のアレルギー増加の謎:現代社会が生み出す「カナリア」とは?

近年、人間と同じように犬のアレルギーが増加しています。その背景には、一体何が潜んでいるのでしょうか?この記事では、犬のアレルギー増加の現状と、その原因を探ります。東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授の知見も交えながら、愛犬の健康を守るためのヒントを探っていきましょう。

なぜ犬のアレルギーが増えているのか?

アレルギーは、現代社会において身近な病気となっています。「2030年には2人に1人がアレルギー患者」という予測もあるほど、その影響は広範囲に及んでいます。そして、この問題は人間だけでなく、犬や猫といったペットにも及んでいるのです。

alt="犬の皮膚病。約半数はアトピー性皮膚炎、残りは食物アレルギー。"alt="犬の皮膚病。約半数はアトピー性皮膚炎、残りは食物アレルギー。"

医療人類学者のテリーサ・マクフェイル氏の著書『アレルギー:私たちの体は世界の激変についていけない』では、アレルギーの全貌を深く掘り下げています。食物アレルギー、花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など、様々なアレルギーに苦しむ人々や医療関係者への取材を通して、アレルギーの複雑なメカニズムが明らかになっています。

犬は環境変化の「カナリア」

同書では、ペットは環境変化という炭鉱の「カナリア」だと表現されています。これは、ペットが人間よりも早く環境変化の影響を受け、その兆候を示す存在であることを意味しています。村田准教授も、犬は現代社会における「カナリア」だと考えています。犬は人間よりもアレルギーの感作・感受性が高い可能性があり、また、自分の状態を言葉で伝えることができないため、症状の悪化を回避するのが難しいという側面もあります。

腸内細菌の乱れとアレルギーの関係

腸内細菌のバランスが崩れるとアレルギーを発症しやすくなるという研究結果が多数報告されています。村田准教授もこの分野の研究に携わっており、犬の腸内細菌についても調査を行いました。その結果、アレルギーを発症した犬の一部では、人間の患者よりも腸内細菌叢が乱れていることが判明しました。

飼い主の行動がアレルギーを悪化させている可能性

犬は飼い主の顔や手を舐めるだけでなく、家の中の様々な物を匂ったり舐めたりする習性があります。飼い主は犬との快適な生活のために、消臭剤やシャンプーなどの化学物質を頻繁に使用することがあります。しかし、清潔さを追求するあまり、これらの化学物質が犬の腸内細菌や皮膚にダメージを与え、アレルギーを悪化させている可能性があるのです。

清潔志向が招くリスク

「無臭で清潔な犬」を求める飼い主の行動が、実は愛犬の健康を脅かしているかもしれないという事実は、改めて考えさせられます。犬のアレルギー増加の背景には、このような現代社会特有の生活環境が大きく影響していると考えられます。

愛犬のアレルギーを防ぐために

愛犬のアレルギーを防ぐためには、生活環境を見直し、化学物質の使用を最小限に抑えることが重要です。また、犬の腸内環境を整えることも大切です。獣医師や専門家と相談しながら、愛犬に合ったケア方法を見つけていきましょう。