西九州新幹線の未整備区間である武雄温泉駅(佐賀県武雄市)から九州新幹線への接続区間を巡り、佐賀県の山口祥義知事、長崎県の大石賢吾知事、JR九州の古宮洋二社長の三者が19日、佐賀県庁で会談しました。この会談では、未整備区間を通常の新幹線と同じ「フル規格」で整備する場合、佐賀県の費用負担軽減が前提であるという認識で一致しました。しかし、地元負担の割合は法令で定められているため、政府・与党からの具体的な解決策が求められる中、今後の展開はなお不透明な状況です。
「特殊事情」と高額な費用負担への懸念
今回の三者会談は昨年5月以来、2回目となります。約1時間の協議後、記者団の取材に応じた山口知事は、西九州新幹線には他の路線にはない「特殊事情がある」と強調し、「費用負担が定価というわけにはいかない」と述べました。
この「特殊事情」とは、当初、未整備区間において在来線の活用を前提に関係機関が合意し、新幹線と在来線を直通運行できる「フリーゲージトレイン」(FGT)の開発が政府によって進められていた経緯を指します。しかし、FGTは技術的な問題により開発が断念され、政府の方針は急遽フル規格での整備へと転換しました。佐賀県の試算では、フル規格での整備にかかる同県の費用負担は1400億円以上となり、山口知事はこの金額を「大変高価だ」と表現し、懸念を示しています。
西九州新幹線の車両と駅のイメージ。未整備区間の費用負担軽減が議論の焦点に。
国への働きかけと継続協議の必要性
大石知事は、FGT開発の断念という経緯を踏まえ、国に対して根本的な解決策を出すよう働きかけていきたいと述べました。JR九州の古宮社長も、「(関係機関の合意は)FGTで止まっており、他の新幹線整備とは事情が異なる」と指摘。財源確保に向けては、三者が一体となって国に働きかけていくのが良いとの認識を示しました。関係者間での意見交換は今後も継続していくことで合意に至りました。
新幹線の整備を巡る地元負担の問題は、西九州新幹線に限ったことではありません。北陸新幹線の延伸においても、同様に地元負担の軽減を求める声が上がっており、全国的な課題として注目されています。
まとめ
西九州新幹線の未整備区間をフル規格で整備するにあたり、佐賀県の費用負担軽減の必要性については関係者間で一致したものの、法的な制約が残る中、具体的な解決策は依然として不透明です。政府・与党の対応と、今後も継続される三者協議が、この難題の行方を左右することになります。