イギリスがインド洋のチャゴス諸島をモーリシャスに返還する計画に、ドナルド・トランプ前米大統領の復帰が影を落としています。米英共同軍事基地が存在するディエゴ・ガルシア島を巡り、国際情勢と領土問題が複雑に絡み合い、今後の行方が注目されています。
チャゴス諸島返還合意の概要と暗礁
イギリスは2022年10月、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに譲渡することで合意しました。しかし、戦略的に重要なディエゴ・ガルシア島の軍事基地は、99年間のリース契約でイギリスが引き続き使用することになっていました。バイデン政権はこの合意を承認していましたが、トランプ氏の復帰により状況は一変。合意の見直しが必要となり、モーリシャス政府はイギリスとの再交渉を余儀なくされています。
チャゴス諸島の美しいビーチ
中国の影響懸念
一部の米政界関係者は、チャゴス諸島の返還により、中国が同地域に進出する可能性を懸念しています。モーリシャスは中国と貿易協定を締結しており、この点が懸念材料となっているようです。国際関係専門家の佐藤一郎氏（仮名）は、「中国の海洋進出戦略を考慮すると、チャゴス諸島の地政学的重要性は無視できない」と指摘しています。
強制退去の歴史と住民の思い
チャゴス諸島は、かつてイギリス領だったモーリシャスの一部でした。1960年代、イギリスは軍事基地建設のため、島民を強制的に退去させました。この強制退去は国際的な非難を浴び、国際司法裁判所もイギリスの支配を違法と判断しています。
故郷への帰還は叶うのか？
チャゴス諸島の元住民たちは、モーリシャスやセーシェル、イギリスなどに分散して暮らしています。返還合意には、モーリシャスがチャゴス諸島への再定住プログラムを開始できるという条項が含まれていますが、ディエゴ・ガルシア島は対象外となっています。故郷への帰還を願う元住民にとって、この合意は複雑な思いを抱かせるものとなっています。
ディエゴ・ガルシア島にある米軍基地
今後の展望
チャゴス諸島の返還問題は、国際政治、安全保障、そして人権といった様々な側面が絡み合った複雑な問題です。トランプ氏の復帰により、合意の行方は不透明感が増しています。今後の展開は、米中関係やインド洋地域の地政学的バランスにも影響を与える可能性があり、引き続き注視していく必要があります。
専門家の見解
国際法専門家の田中花子氏（仮名）は、「国際法の観点から見ると、チャゴス諸島の住民の権利回復が最優先されるべきだ」と述べています。また、安全保障専門家の鈴木次郎氏（仮名）は、「ディエゴ・ガルシア島の軍事基地は、インド洋における戦略拠点として重要な役割を担っている。今後の合意内容によっては、地域の安全保障環境に大きな影響を与える可能性がある」と指摘しています。
