韓国で猛威を振るう「スーパーバクテリア」:抗生物質の効かない感染症が急増、死者も増加の危機

韓国で、どんな抗生物質も効かない「スーパーバクテリア(多剤耐性菌)」による感染症が急増し、深刻な社会問題となっています。この脅威は一体どのようなものなのか、そして私たちはどう向き合えば良いのでしょうか。本記事では、韓国におけるスーパーバクテリアの現状と対策について詳しく解説します。

スーパーバクテリアとは?その脅威の実態

韓国で猛威を振るうスーパーバクテリアとは、カルバペネム系抗生物質に耐性を持つ腸内細菌(CRE)のことを指します。カルバペネム系抗生物質は、いわば「最後の砦」とも呼ばれる強力な抗生物質です。この薬が効かないということは、他に有効な治療法が限られることを意味し、感染症治療における深刻な危機と言えるでしょう。

韓国の病院の様子韓国の病院の様子

韓国国会で開かれた政策討論会では、議政府聖母病院のペ・ソンラク教授が、CRE感染症の報告件数が2017年の約5,700件から2023年には約38,400件と、わずか5年間で5倍以上に増加したという衝撃的な事実を明らかにしました。さらに、死亡者数も同期間で37人から633人と、実に17倍以上に増加しているのです。

スーパーバクテリア発生の背景:抗生物質の乱用と誤用

なぜこのような事態が起きているのでしょうか?専門家によると、最大の原因は抗生物質の乱用と誤用にあります。韓国はOECD加盟国の中でも抗生物質の使用量が上位に位置しており、特に尿路感染症や腎盂腎炎などの患者への安易な抗生物質の使用が問題視されています。

これらの疾患は所得が低いほど発病率が高く、経済的な理由から適切な医療を受けられない人々が、安価な抗生物質に頼らざるを得ない状況も背景にあると考えられています。 慶熙大学校病院感染内科のキム・ウジュ教授(仮名)は、「抗生物質の適切な使用に関する教育を強化し、医療従事者だけでなく一般市民への啓発活動も重要だ」と指摘しています。

スーパーバクテリア感染症の深刻な影響:敗血症の増加

抗生物質耐性菌が血液に入り全身に感染症状を引き起こす敗血症は、深刻な合併症を引き起こし、死に至るケースも少なくありません。韓国では、全羅北道や全羅南道で敗血症による死亡率が高いことが報告されており、高齢者人口の割合が高いことが要因の一つとされています。

今後の対策:監視体制の強化と研究開発の推進

世界保健機関(WHO)は、2050年には抗生物質耐性菌による死亡者数が1,000万人に達すると予測しており、がんによる死亡者数を上回る可能性も指摘されています。この深刻な事態に対処するため、韓国では多剤耐性菌の監視体制の強化や、菌株バンクの設立による特性分析、ワクチンや診断ツール開発などの研究が推進されています。

スーパーバクテリアの電子顕微鏡写真スーパーバクテリアの電子顕微鏡写真

全南大学病院のユ・ソンヒョン教授は、「全国規模での菌株バンク設立と遺伝子分析は、新たな治療法開発に不可欠だ」と強調しています。また、一次医療機関における抗生物質耐性監視体制の構築も急務とされています。

スーパーバクテリア対策:私たちにできること

スーパーバクテリアの脅威から身を守るためには、私たち一人ひとりの意識改革が重要です。安易に抗生物質を服用せず、医師の指示に従って適切に使用するよう心がけましょう。また、手洗いなどの基本的な衛生管理を徹底することも、感染症予防に効果的です。

韓国のスーパーバクテリア問題は、決して他人事ではありません。世界的な脅威として認識し、適切な対策を講じていく必要があります。