創価学会の変革期:池田名誉会長逝去後の「学会離れ」と若者向けYouTube戦略

2023年11月15日、創価学会の池田大作名誉会長が永眠してから約2年が経ち、その影響は組織全体に深く及んでいます。公明党は26年間続いた自公連立に終止符を打つ可能性を迎え、その支持母体である創価学会では、長らく懸念されてきた「学会離れ」が加速。特に若年層の獲得が喫緊の課題となり、組織はかつてない転換期を迎えています。こうした背景の中、学会は若者層にアプローチするため、これまでのイメージを覆すような斬新なYouTubeチャンネルを開設し、新たな戦略を展開しています。

揺らぐ支持基盤:創価学会の会員減少の実態

実際にどれほど学会員が減少しているのか、その実態は公明党の得票数に如実に表れています。創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏によると、「創価学会の信者数の推移は、比例区における公明党の得票数がすべてを物語っています。2005年の衆院選では898万票でしたが、2023年7月の参院選では521万票にまで落ち込みました」。この数字は、組織の支持基盤が大きく揺らいでいることを示しています。

会員減少の主要な理由としては、まず学会員の高齢化が挙げられます。さらに、乙骨氏は「池田名誉会長の死去は決定的でした。彼を“人生の師匠”と慕ってきた古参にとっては、名誉会長の存在が学会にとどまる理由の最後のとりでだったのです。そのとりでがなくなって、退会する人が一気に増えました」と指摘します。カリスマ的指導者の不在が、長年組織を支えてきた層の離反を招いているのです。

問題は若年層にも及んでいます。特に若い女性会員の減少が顕著で、かつてあった「女子部」の維持が困難になり、4年前に壮年女性の組織「婦人部」と統合され「女性部」となりました。教育機関にも影響が出ており、創価女子短期大学は2026年度の募集を停止し、創価大学に統合される事態に発展しています。

若い女性の流出には、現代社会の特性であるSNSが大きく関わっていると乙骨氏は分析します。「昔は“週刊誌を読むな”で済んだ情報統制ですが、いまはネットで学会のネガティブな情報が簡単に手に入る。それを見た恋人や夫から“こんな団体に入っているのか?”と詰められた女性が、活動をやめるか退会するケースが増えているのです」。インターネット上の情報が、組織外からの圧力となり、会員離れの要因となっています。

創価学会の池田大作名誉会長。彼の逝去が会員離れの決定打の一つに。創価学会の池田大作名誉会長。彼の逝去が会員離れの決定打の一つに。

若者層獲得への新戦略:異例尽くしのYouTubeチャンネル

こうした危機感を背景に、創価学会は今年5月からYouTubeチャンネル「創価学会の日常ちゃんねる」をスタートさせました。2023年10月28日現在、計23本の動画が投稿されており、その内容は実に異例尽くしで、これまでの組織のイメージを大きく変えるものです。

ある学会関係者は、チャンネルの狙いについて次のように語ります。「最初の動画は東京・信濃町の学会本部などに潜入するというもので、学会員以外はまず目にする機会がない施設を惜しげもなく披露していました」。その後も、非学会員のYouTuberが信者のイベントに参加したり、学会の支部長として知られるお笑いコンビ・ナイツの塙宣之氏(47)に密着したり、聖教新聞社に潜入したりと、内容は多岐にわたります。これらの企画は、組織の内部をオープンにすることで、外部からの関心を引き、誤解を解くことを意図していると見られます。

さらに驚くべきは、近作で原田稔会長(84)が登場し、フランクなインタビューに応じていたことです。学会の元理事長・正木正明氏の長男で、自身も元学会本部職員である正木伸城氏は、「滅多にメディアに登場する人ではありませんから、さすがに驚きました」とコメントしています。動画内ではYouTuberが原田会長に対し「学会が世間から嫌われていることについてどう思うか」と率直な質問を投げかけ、それがそのまま公開されていました。原田会長は「草創期の激しい折伏のイメージが残っているのだと思う」と応じており、正木伸城氏も「昔なら考えられないですね」とその公開性に驚きを隠しません。

動画では頻繁に「大丈夫SOKA? ポイント」というテロップが入り、「学会員、笑い声でかめ」「仏教徒、想像以上にハシャぐ」といった自虐的なテロップが随所に散りばめられています。これが動画に軽妙な味付けを与え、若者層に受け入れられやすいコンテンツへと昇華させています。正木伸城氏は、「学会には、外部からの自分たちの見え方を良くしたいと感じている人が結構いました。動画はうまく自虐的に見せていて、マーケティング施策としてレベルが高いと思いました」と評価しており、このYouTube戦略が組織のイメージ刷新と若者層へのアプローチにおいて、非常に計算されたものであることを示唆しています。

まとめ

池田大作名誉会長の逝去から2年が経過し、創価学会は「学会離れ」という深刻な課題に直面しています。特に高齢化と若年層、そして女性会員の減少は組織の持続可能性に大きな影を落としています。しかし、このような状況下で、学会は「創価学会の日常ちゃんねる」というYouTubeチャンネルを開設し、従来の閉鎖的なイメージを払拭し、若者層への開かれたコミュニケーションを試みています。

内部の施設公開、非会員YouTuberとのコラボ、幹部への直接的な質問、そして自虐的なユーモアを交えたコンテンツは、これまでとは一線を画す革新的なマーケティング戦略と言えるでしょう。この新たな試みが、果たして「学会離れ」の流れを食い止め、新たな世代の支持を獲得できるのか、今後の動向が注目されます。

参考文献