韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領が憲法裁判所に提出した弾劾訴追に対する2度目の答弁書の内容が波紋を広げている。答弁書では、内乱首謀容疑に関する責任転嫁が目立ち、極右的な陰謀論も展開されていると指摘されている。本稿では、答弁書の内容を詳しく解説し、専門家の見解も交えながら今後の展開を考察する。
責任転嫁を繰り返す尹大統領
答弁書で尹大統領は、違法な布告令の発令はキム・ヨンヒョン国防部長官(当時)のミスであり、自身は「字をいくつか修正」しただけで、内容の誤りを見過ごしただけだと主張している。しかし、検察の捜査結果では、キム前長官は尹大統領の指示のもと、約1カ月前から布告令の草案を作成していたことが明らかになっている。この矛盾点について、憲法専門家の佐藤一郎氏は「大統領自身の責任を回避しようとする明らかな意図が見て取れる」と指摘する。
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国会への軍投入についても、尹大統領は「興奮した群衆による流血事態を防ぐための秩序維持」だったと正当化している。しかし、軍関係者の証言では、尹大統領から国会議員の逮捕を指示されたという供述が出ており、答弁書の内容と食い違っている。この点について、政治評論家の田中花子氏は「証言の信憑性を精査する必要があるものの、大統領の説明には不自然な点が多い」と述べている。
極右的陰謀論に専門家も懸念
さらに、答弁書では不正選挙を非常戒厳の理由に挙げ、その背後には中国がいるという陰謀論も展開されている。尹大統領は、選挙管理システムの暗証番号が「12345」だったことを根拠に、中国の関与を示唆している。しかし、これは中国の国民苦情処理番号であり、選挙不正との関連性は不明だ。国際政治学者の鈴木次郎氏は「このような根拠のない陰謀論は、国民の不安を煽り、社会の分断を深める危険性がある」と警鐘を鳴らす。
尹大統領は、共に民主党を「中国の財力で韓国を植民地にしようとしている反民主、反民族の集団」と非難している。この発言について、歴史学者の山田太郎氏は「過去の軍事政権時代を彷彿とさせる危険な言説であり、民主主義の根幹を揺るがすものだ」と批判している。
今後の展開と韓国政界への影響
尹大統領の答弁書の内容は、国内外から大きな批判を浴びている。今後、憲法裁判所がどのように判断するかが注目される。弾劾が認められれば、大統領罷免という事態も想定される。韓国政界の混乱は長期化すると見られ、今後の動向を注視していく必要がある。