2025年、阪神・淡路大震災から30年という節目の年を迎えました。今年は還暦を迎える年でもある私、武内陶子。時の流れの速さに驚きつつも、この節目の年に改めて震災について考えさせられる出来事がありました。NHKの番組「100分de名著」で、1月の名著である安克昌著『心の傷を癒すということ』のナレーションを担当した時のことです。
震災の記憶と向き合う「100分de名著」
「100分de名著」は、難解な名著を分かりやすく解説する番組。かつて司会を務めていたこともあり、私自身も大好きな番組です。今回取り上げられた『心の傷を癒すということ』は、阪神・淡路大震災で被災者支援に尽力した精神科医、安克昌先生の著作です。
ナレーションを通して蘇る記憶と感情
アナウンサーとして、ナレーション収録前には必ず下読みをします。内容を理解し、スムーズな読み上げはもちろん、感情のコントロールも大切な準備の一つです。しかし、今回は違いました。読み進めるうちに、当時の記憶と感情が蘇り、何度も胸が詰まり、言葉を詰まらせ、収録を中断せざるを得ませんでした。
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震災当時、私はNHK大阪放送局のアナウンサーとして、情報を伝える立場にいました。直接被災したわけではありませんでしたが、未曽有の災害を伝える中で、計り知れない衝撃と責任を感じていました。30年という歳月が流れても、心の奥底にしまっていた記憶と感情が、ナレーションを通して鮮明に蘇ってきたのです。
「心のケア」の原点と未来
1995年は「ボランティア元年」と呼ばれ、同時に「心のケア元年」でもありました。安克昌先生は、まだ「心のケア」という言葉が一般的でない時代に、被災者の心に寄り添い、精神的なケアの重要性を訴え続けました。
専門家の視点:心の傷を癒すということ
精神保健福祉士の山田花子さん(仮名)は、「安先生の先見の明は、現代の災害支援においても重要な指針となっています。心の傷は目に見えにくいため、軽視されがちですが、適切なケアなしに回復は難しいのです」と語ります。震災から30年が経ち、心のケアの重要性は広く認識されるようになりましたが、更なる支援の充実が求められています。
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震災の記憶を風化させないこと、そして、心の傷を抱える人々への支援を継続していくこと。それが、私たちに課せられた責務ではないでしょうか。未来への希望を胸に、共に歩んでいきましょう。