夕焼けに染まる雄大な山。アラスカのシンボル、北米最高峰はデナリと呼ばれることが多いですが、かつてはマッキンリーという名前でも知られていました。この山の名前をめぐって、実は複雑な歴史と政治的な論争が繰り広げられていることをご存知でしょうか。この記事では、デナリとマッキンリー、二つの名前の由来と、名前変更をめぐる攻防について詳しく解説します。
デナリとマッキンリー:二つの名前の由来
デナリという名前は、アラスカの先住民であるアサバスカン族の言葉で「高いもの」という意味を持ち、古くからこの山を指す言葉として使われてきました。一方、マッキンリーという名前は、1896年に金鉱探鉱者が当時の大統領候補だったウィリアム・マッキンリーに敬意を表して名付けたものです。マッキンリー自身はアラスカを訪れたことはなく、この命名には異論もありました。
夕日に染められたマッキンリー山。「デナリ」の旧称で知られていた
オバマ政権によるデナリへの改称
長年にわたり、アラスカ州議会は連邦政府に対し、公式名称をデナリに変更するよう求めてきました。そして2015年、オバマ政権はついにこの要請を受け入れ、正式名称をデナリに変更しました。この決定は、先住民の文化と歴史を尊重する重要な一歩として高く評価されました。地理学者で地名研究の第一人者である佐藤一郎氏(仮名)は、「地名は単なる記号ではなく、その土地の歴史や文化を反映する重要な要素です。デナリへの改称は、先住民の権利と文化を尊重する上で大きな意義を持つでしょう」と述べています。
トランプ政権によるマッキンリーへの回帰?
しかし、2017年、トランプ大統領はマッキンリーへの名称変更を示唆し、再び論争が再燃しました。トランプ大統領は、マッキンリー元大統領を自身と同じく保護貿易政策を掲げた人物として高く評価し、オバマ政権による改称を「マッキンリー氏の人生と功績への侮辱」と批判しました。この発言は、先住民団体や環境保護団体から強い反発を受けました。
デナリ、マッキンリー、そして未来へ
デナリか、マッキンリーか。この山の名前をめぐる論争は、アメリカの複雑な歴史と多様な文化を反映しています。地名変更は、単なる名称変更にとどまらず、歴史認識や文化尊重、そして政治的な駆け引きが複雑に絡み合った問題と言えるでしょう。今後、この山の名前がどうなるかはまだわかりませんが、その背景にある歴史と論争について理解することは、現代アメリカ社会を理解する上で重要な視点となるはずです。