日本は、米国からの「関税追加爆弾」適用を事実上回避する見通しとなった。日米関税交渉における「口頭合意」と、その後の米国大統領令の内容との間に生じた論争点について、米国側が修正措置を取ることを説明したためだ。訪米中の赤沢亮正経済再生担当相は7日(現地時間)、ワシントンでの記者会見で、米国側からこの「修正措置」について説明を受けたと明らかにした。
議論を呼んだ大統領令の内容と日本の抗議
米国と日本は先月、関税交渉の合意を発表していた。その際、日本側は、従来の関税が15%未満だった輸出品については一律に15%の関税が適用され、15%を超える関税の品目に対しては「特例」として本来の税率が適用されると説明していた。しかし、トランプ米大統領が署名した大統領令には、日本政府の説明とは異なる内容が含まれており、大きな議論を呼んだ。大統領令では「特例」措置の対象が欧州連合(EU)のみとされ、日本に対しては従来の関税に相互関税15%が「追加」されると記載されていたからだ。これに対し、赤沢大臣は「合意と異なる」と直ちに訪米し、修正を強く要求していた。
米側の「修正措置」と「関税払い戻し」
赤沢大臣は会見で、「日米間の合意に沿っていない内容の大統領令が発出され、適用が開始されたことは極めて遺憾だ」と述べた上で、「米国側から今後、適時に大統領令を修正する措置を取るとの説明があった」と強調した。また、赤沢大臣は今回の訪米で、ウィルバー・ロス商務長官やスティーブン・ムニューシン財務長官とそれぞれ180分、30分の協議を行った。その結果、米国からの関税の「払い戻し」についても合意が得られたことを明らかにした。これは、事実上、今回の混乱が米国の「内部の処理上の問題」であったことを示唆している。7日時点で相互関税が課され、「追加」で相互関税が付与された部分については、「合意内容を上回る部分は遡及して払い戻すという説明もあった」という。米国側が大統領令をいつ修正するかについては具体的に明らかにしなかったものの、赤沢大臣は「常識的な範囲で米国側が対応すると理解する」と語った。
ワシントンでの記者会見に臨む赤沢亮正経済再生担当相。日米関税交渉における米国の関税修正措置について説明する様子。
自動車関税の進展と合意文書の議論
日本が交渉で特に注力してきた自動車関税の部分でも進展があった点を赤沢大臣は強調した。今回の相互関税の部分を米国が修正することで、自動車関税(従来の関税を含む15%)も適用されるという説明が加えられた。また、合意文のない関税合意が今回の混乱を招いたのではないかという質問に対し、赤沢大臣は「文書を作成していないから何かが起きたというのは、まったく理解できない」と強く否定した。さらに、「合意文書を作るなら日本に都合のよい『関税率をこうする』ということだけ書いて米国側が署名してくれると思うのか」と反問。合意文を作成するプロセスでは、双方が調整に時間を要し、関税猶予期間内に合意するのは困難だったとの主張を展開した。
赤沢大臣の個人的な交流と交渉の雰囲気
追加の関税「爆弾」を回避することに成功した赤沢大臣は、この日の会見後、自身のX(旧ツイッター)に交渉の様子を投稿した。ロス長官について「日本愛あふれるナイスガイ、ラトちゃんとの話し合いは割と上手くいきました」と親しみを込めて「ラトちゃん」と表現。ムニューシン長官に対しても、執務室で一緒に撮った写真とともに「ベッちゃん」と表現し、両国閣僚間の良好な関係を誇示した。
今回の交渉結果は、日米間の貿易問題において日本が粘り強く交渉し、自国の利益を守る姿勢を示したものであり、今後の両国関係にも影響を与える可能性を秘めている。