中国が北朝鮮への圧力を強めている兆候が見られています。北朝鮮軍のロシア派兵を背景に、中国当局は北朝鮮労働者の取り締まりや貿易制限など、様々な措置を講じているようです。本記事では、その実態と背景について詳しく解説します。
北朝鮮労働者の送還とビザ制限
中国当局は、遼寧省丹東地域に「北送事務所」を設置し、ビザが失効した北朝鮮労働者を本国に送還する取り組みを強化しています。複数の情報筋によると、中国政府は北朝鮮人の新規常駐人員派遣を許可しておらず、既存の労働者契約が満了した企業は新たな労働者を確保できない状況です。
北朝鮮の国旗
さらに、中国国内での北朝鮮国籍者の営業活動も制限されており、会社登録の不許可や銀行口座の凍結といった措置が取られています。これらの影響で、北朝鮮当局や貿易会社は一部事業体のロシア移転を検討しているとの情報もあります。
貿易制限と密輸取り締まりの強化
中国は税関での対北朝鮮密輸取り締まりも強化しています。2023年11月以降、北朝鮮への輸出物資を大幅に制限し、高関税を適用しています。以前は北朝鮮代表者が帰国時に電子製品を持ち帰ることができましたが、現在では物品検査が強化され、個人物品の搬入もほぼ中断されているとのことです。
丹東税関では、北朝鮮への荷物から制裁物資が繰り返し発見されたことを理由に、2023年10月末以降、荷物の通関が一時中断される事態も発生しました。このため、航空便を利用した帰国需要が増加し、北朝鮮当局は中国との航空便を増便するとの噂も流れています。
中国の国旗
内陸貿易拠点の長白-恵山および臨江-中江地域でも密輸業者の逮捕が相次ぎ、取り締まりが強化されています。これらの地域では、仕事のない密輸車が多数駐車されている光景が目撃されているようです。 国際政治アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「中国政府は、北朝鮮の違法行為を黙認しない『合法的圧力』を強化している」と指摘しています。
朝中関係の悪化
中国の圧力強化に対し、北朝鮮も反発の姿勢を見せています。平壌では若い女性の韓国風、そして中国風ヘアスタイルまでも取り締まる動きが出ているとの情報があります。また、中国に派遣された北朝鮮労働者の間では、「中国がロシアに派兵した金正恩を教育している」という声も上がっているようです。
2023年に75周年を迎えた「朝中親善の年」は閉幕式も開催されず、事実上終了しました。北朝鮮国営朝鮮中央通信のウェブサイトからも関連バナーが削除され、ロシアとの連携を強調するバナーに置き換えられています。 専門家の間では、こうした動きは朝中関係の悪化を示すものとして注目されています。
貿易額の減少
中国海関総署の発表によると、2024年の朝中貿易額は前年比5%減の約3400億円となりました。この減少も、中国が北朝鮮との距離を置いていることの表れと言えるでしょう。
慶南大極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は、これらの動きについて、「北朝鮮のロシア派兵が中国の安全保障を不安定にする要因になり得るという危機感が反映されている」と分析しています。 また、中国の対北朝鮮影響力が低下していることも示唆していると指摘しています。
北朝鮮のロシア派兵を契機に、中国は北朝鮮への圧力を強めているようです。今後の両国関係、そして北朝鮮情勢にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していく必要があります。