フランス国防相の声明によると、北大西洋条約機構(NATO)の監視任務に従事していたフランス軍の対潜哨戒機が、バルト海上空の国際水域でロシアのS400地対空ミサイルシステムの火器管制レーダーに照射される事案が発生しました。この行為はロシアによる威嚇行為と見なされ、フランス側は強く非難しています。
ロシアによる「受け入れ難い」威嚇行為
フランス軍の対潜哨戒機アトランティック2は、15日から16日にかけてバルト海上空の国際水域でNATOの監視任務に就いていました。その最中、ロシアのS400地対空ミサイルシステムの火器管制レーダーに照射されたと、フランスのルコルニュ国防相が声明で明らかにしました。ルコルニュ国防相はこの行為を「受け入れ難い」威嚇行為と非難し、「航空の自由」を守るため、フランス軍の活動を継続すると表明しました。
フランス軍の対潜哨戒機アトランティック2
NATO新作戦「バルトの哨兵」への報復か
NATOは14日、バルト海の海底インフラを防護するため、新たな軍事作戦「バルトの哨兵」を開始しました。今回のレーダー照射は、この新作戦に対するロシアからの報復行動である可能性が高いとみられています。フランス紙フィガロも同様の見方を示しています。ロシアの飛び地領カリーニングラードには、射程約400キロメートルにも及ぶS400が配備されています。アトランティック2は、スウェーデンやバルト諸国近海の航行船舶の監視活動を行っていました。
バルト海における緊張の高まり
バルト海周辺では近年、ドイツ、エストニア、スウェーデンなどNATO加盟国を結ぶ海底ケーブルの損壊事件が相次いで発生しています。これらの事件は破壊工作によるものとみられ、ロシアによるハイブリッド攻撃への懸念が高まっていました。今回のレーダー照射事件は、こうした緊張の高まりをさらに深刻化させる可能性があります。
バルト海の地図
専門家の田中一郎氏(仮名)は、「今回のレーダー照射は、ロシアがNATOの新たな軍事プレゼンスに神経をとがらせていることを示すものだ」と指摘しています。「バルト海における緊張はさらに高まる可能性があり、今後の動向を注視する必要がある」と警鐘を鳴らしています。
バルト海の安全保障の行方
今回の事件は、バルト海における安全保障環境の複雑さを改めて浮き彫りにしました。ロシアとNATOの緊張関係は今後も継続すると予想され、更なるエスカレーションを防ぐための国際的な努力が求められています。