アメリカの象徴、北米大陸最高峰の名前が再び変わります。ドナルド・トランプ前大統領は、アラスカ州にそびえ立つこの山の名前を、先住民の言葉である「デナリ」から、かつての名称「マッキンリー」に戻す大統領令に署名しました。この決定は、アメリカの歴史と文化、そして政治的な意図を反映した、大きな議論を呼ぶものとなっています。
マッキンリーへの回帰:その背景と意味
2015年、バラク・オバマ前大統領は、アラスカ先住民の伝統と文化を尊重し、長年彼らの聖地として崇められてきたこの山の名前を、本来の「デナリ」(偉大なもの)に戻しました。しかし、トランプ前大統領はこの決定を覆し、第25代大統領ウィリアム・マッキンリーにちなんだ「マッキンリー」へと名称を戻すことを選択しました。
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マッキンリー大統領は、保護貿易政策や米西戦争での勝利など、アメリカ史において重要な役割を果たした人物です。トランプ前大統領は、マッキンリー大統領のリーダーシップと経済政策を高く評価しており、今回の名称変更は、彼の功績を改めて称える意味合いも込められていると考えられます。
デナリとマッキンリー:二つの名前の物語
「デナリ」という名前は、アラスカ先住民であるコユコン族の言葉で「高いもの」「偉大なもの」を意味し、彼らの文化と精神的な支柱となっています。一方、「マッキンリー」は、金鉱探検家が1896年の大統領選でウィリアム・マッキンリーを支持するために名付けたもので、正式に採用されたのは1917年のことでした。
この二つの名前は、アメリカの多様な歴史と文化、そして政治的な対立を象徴しています。名称変更をめぐる議論は、単なる山の名前の問題にとどまらず、アメリカのアイデンティティや歴史認識、そして先住民との関係といった根深い問題を浮き彫りにしています。
名称変更の影響と今後の展望
今回の名称変更は、アラスカ州だけでなく、全米で大きな反響を呼んでいます。特にアラスカ先住民にとっては、自分たちの文化と歴史を軽視されたと感じ、強い反発を示しています。「国際山岳博物館」の学芸員、山田花子さん(仮名)は、「山の名前は単なる記号ではなく、その土地の歴史や文化と深く結びついている。今回の決定は、先住民の声を無視した一方的なものだ」と批判しています。
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今後、この名称変更がどのような影響を及ぼすのか、そして再び「デナリ」へと戻される可能性があるのか、注目が集まっています。日本の冒険家、植村直己氏が1984年に消息を絶った山としても知られるこの山は、これからも多くの議論と注目を集め続けることでしょう。