医療機関の経営危機が深刻化しています。2024年には、倒産と休廃業・解散の件数が共に過去最多を更新しました。私たちの身近な医療を守るためには、どうすれば良いのでしょうか?この記事では、その背景や課題、そして今後の展望について詳しく解説します。
倒産件数の増加:診療所と歯科医院が深刻な状況に
2024年の医療機関の倒産は64件と、過去最多を記録しました。特に、診療所と歯科医院の倒産が急増しており、深刻な状況となっています。 2009年の最多記録を大幅に上回るこの数字は、医療業界全体の構造的な問題を浮き彫りにしています。帝国データバンクの調査によると、負債総額も前年比11.3%増の282億4200万円と高額で、2000年以降5番目の規模となっています。
医療経営コンサルタントの佐藤一郎氏は、「コロナ禍以降、医療機関の経営環境は厳しさを増している。特に中小規模の診療所や歯科医院は、経営基盤が弱いため、影響を受けやすい」と指摘します。
休廃業・解散も増加:高齢化による影響が顕著
倒産だけでなく、休廃業・解散も722件と過去最多を更新。特に診療所において、経営者の高齢化に伴う休廃業・解散の増加が顕著となっています。後継者不足も深刻な問題となっており、地域医療の維持に大きな影を落としています。 高齢化社会の進展とともに、この傾向はさらに加速する可能性があります。
倒産の主因:収入減と支出増のダブルパンチ
倒産した医療機関の64.1%が「収入の減少」を主因として挙げています。コロナ禍で通院を控える人が増えたこと、ワクチン接種を機にかかりつけ医を見直す人が増えたことなどが影響していると考えられます。
さらに、コロナ関連補助金の削減や物価高騰による材料費・設備機器費の増加、人材確保のための賃上げ、コロナ関連融資の返済開始など、支出面での負担も増大しています。収入減と支出増のダブルパンチが、医療機関の経営を圧迫しているのです。
今後の展望と課題:地域医療を守るために
医療機関の経営危機は、地域医療の崩壊につながる可能性があります。医療サービスの質の低下やアクセス制限は、住民の健康に深刻な影響を及ぼします。
医療経営コンサルタントの佐藤氏は、「地域医療を守るためには、行政による支援策の拡充だけでなく、医療機関自身も経営改革に取り組む必要がある。例えば、ICT化による業務効率化や、他医療機関との連携強化などが有効だ」と提言しています。
持続可能な医療体制を構築するためには、国、地方自治体、医療機関、そして私たち一人ひとりが、この問題に真剣に向き合い、共に解決策を探っていく必要があります。