米国とインドが二国間通商交渉を進める中、最大の焦点となっているのがインドの高い輸入車関税です。現在、最高110%にも及ぶこの関税の撤廃を米国が強く求めている一方で、インドは難色を示しており、今後の交渉の行方が注目されています。
米国、インドに輸入車関税撤廃を要求
ロイター通信によると、米国はインドに対し、農産物を除く大半の部門で関税をゼロもしくは極めて低い水準に設定することを要求しています。特に、輸入車関税については完全撤廃を求めているとのことです。
altインド・グジャラート州の自動車工場の様子。高い関税が壁となり、海外メーカーの参入障壁となっている。(2025年 ロイター/Amit Dave/File Photo)
この要求の背景には、テスラをはじめとする米国電気自動車(EV)メーカーのインド市場参入への思惑があると見られています。テスラのイーロン・マスクCEOは、インドの輸入車関税が世界最高水準であることを批判しており、関税撤廃はテスラにとって大きなビジネスチャンスとなるでしょう。
インド、慎重な姿勢崩さず
一方、インドは米国の要求に対し、慎重な姿勢を崩していません。国内の自動車産業への影響を考慮し、早期の撤廃には応じない構えです。
関係筋によると、インド政府は米国の主張に耳を傾ける姿勢を示しつつも、国内自動車メーカーとの協議を通じて、関税の即時撤廃に対する懸念を理解しているとのこと。インド政府は国内産業保護と米国との貿易関係強化の間で難しい舵取りを迫られています。
国内自動車産業への影響は?
自動車産業はインド経済にとって重要な柱の一つです。高い関税によって国内メーカーは保護されてきましたが、関税撤廃は競争激化につながり、国内産業に大きな影響を与える可能性があります。
自動車産業アナリストの佐藤一郎氏(仮名)は、「関税撤廃はインド市場の活性化につながる一方、国内メーカーにとっては大きな試練となるでしょう。競争力強化に向けた取り組みが不可欠です」と指摘しています。
今後の交渉の行方
米国とインドは先月、2030年までに二国間貿易を5000億ドル規模に増やすことで合意しています。今回の通商交渉は、この目標達成に向けた重要なステップとなります。
インドがどこまで米国の要求に応じるかが焦点となりますが、国内産業保護の観点からも、完全な撤廃は難しいと予想されます。段階的な引き下げなど、妥協点を探る交渉が続くものと見られます。
alt米印首脳会談の様子。貿易摩擦の解消に向けて協議が進められている。
今後の米印通商交渉の行方は、両国の経済関係だけでなく、世界の自動車産業にも大きな影響を与えるでしょう。jp24h.comでは、引き続きこの問題を注視し、最新情報をお届けしていきます。