【帝国の慰安婦】控訴審判決で波紋:学問の自由vs歴史的真実、慰安婦名誉毀損訴訟で原告敗訴

慰安婦問題を扱った著書『帝国の慰安婦』をめぐり、著者の朴裕河(パク・ユハ)世宗大学名誉教授に対する名誉毀損訴訟の控訴審判決が波紋を広げています。ソウル高裁は一審判決を覆し、原告である元慰安婦らの訴えを退けました。この判決は「学問の自由」を重視したものですが、歴史的事実の否定を過度に容認するものではないかとの批判も上がっています。

慰安婦名誉毀損訴訟、控訴審で原告敗訴の判決

2013年に出版された『帝国の慰安婦』では、日本軍慰安婦は「売春」であり「日本軍と同志的関係」にあったと記述され、強制連行の事実も否定されています。これに対し、元慰安婦ら13名は名誉毀損で朴教授を提訴しました。2016年の一審判決では、朴教授の表現は学問の自由の範囲を超えており、原告の名誉を毀損したとして、賠償を命じる判決が下されました。

しかし、9年後の控訴審判決では、ソウル高裁は一審判決を覆し、原告敗訴の判決を言い渡しました。裁判所は「問題の書籍は学問的表現物であり、学問的に容認される範囲を逸脱したものではない」と判断し、朴教授の主張を「学問的意見の表明」とみなしました。

慰安婦訴訟イメージ慰安婦訴訟イメージ

学問の自由と歴史的事実の否定:専門家の見解

この判決に対し、専門家からは批判の声が上がっています。梨花女子大学のイ・ジュヒ教授(社会学)は、「国家が共有する基本的な真実を否定することまで学問の自由として認めるべきではない」と指摘し、慶北大学法科大学院のキム・チャンロク教授も「教授の肩書きを持つ人が書いたからといって、全てが学問的主張になるわけではない」と述べています。彼らは、学問の自由という名のもとに歴史的事実が歪曲されることに懸念を示しています。

社会的影響と今後の展望

今回の判決は、慰安婦問題に関する歴史認識や学問の自由の範囲について、改めて議論を巻き起こす可能性があります。今後の動向に注目が集まっています。 慰安婦問題の真実究明と被害者への適切な対応が求められる中、この判決がどのような影響を与えるのか、今後の研究や議論の進展が期待されます。

学問の自由イメージ学問の自由イメージ

まとめ:歴史認識と学問の自由の狭間で

今回の判決は、学問の自由と歴史的事実の尊重という二つの価値のバランスを問う難しい問題を提起しています。慰安婦問題というデリケートなテーマを扱う上で、学問的探究の自由を保障しつつ、歴史的事実を歪曲することなく、被害者の尊厳を守る方法を模索していく必要があるでしょう。